シンポジウム
2016年(平成28年)1月29日
創立40周年記念シンポジウム「日本酪農の可能性 -人・牛・飼料-」
意見交換
シンポジスト(講演者)
堂越 顕 氏根釧農業試験場地域グループ主査
荒井 義久 氏北海道酪農検定検査協会乳牛検定部長
龍前 直紀 氏(株)TACSしべちゃ場長
座長
松田 徹雪印メグミルク株式会社 酪農総合研究所 担当部長
越智 成東雪印メグミルク株式会社 酪農総合研究所 担当課長
座長
只今から意見交換を始めさせて頂きます。
最初に、皆様方から頂いた質問票に基づいて進めさせて頂きます。
まず堂腰先生へのご質問ですが、搾乳ロボット導入が乳中体細胞に及ぼす影響について、データや海外でのご報告があれば教えて下さい。
堂腰先生
搾乳ロボットは搾乳回数が多いので、体細胞数は若干低下するということが言われています。しかし、体細胞数の増減は搾乳ロボットに限らず牛舎環境が大きな要因となっているので、搾乳ロボット自体が体細胞数の上げ下げに特別に関与しているとは思いません。
座長
放牧と搾乳ロボットの組み合わせの可能性について、お考えをお聞かせ願います。特に、国内外での事例があれば教えて下さい。
堂腰先生
オランダでは牛を放牧させなければならないという決まりがあるので、搾乳ロボットとの組合せでも実施されています。その場合の方法としては2つあります。
1つは、セレクションゲートという方法です。搾乳ロボットで搾乳した直後の牛がゲートを通ると放牧地側に開き、一方、搾乳間隔が空いていて搾乳する必要がある牛が放牧地へ行こうとしても、放牧地に出さずに牛舎に戻すという方法で制御しています。ただし、放牧と言っても牧草を食べさせて乳を搾るというやり方ではありません。
これまで根釧農業試験場では牧草を食べさせて乳を搾る放牧の研究を行ってきましたが、その時の方法は資料にあるワンウェイカウトラフィックを採用しています。具体的には採食場所から一方通行で放牧地へ行き、そこから帰ってきた牛は休息場所へ戻り、休息場所にいる牛が放牧地へ出るには、ロボットを通って採食場所に行かなければならないという方法です。それに集約放牧の形態を加えて、給水は放牧地ではなく牛舎内のロボットの近くに給水器を設置します。この場合当然ですが、全頭が放牧地に行き、その全頭がまた戻って来るので、搾乳ロボットが混み合う時間帯が生じます。昼間や夜中は牛が全く帰って来ない時間帯があるため、搾乳ロボットの処理能力は低下してしまいますが、放牧地で牧草を食べるので餌やりの仕事も無く、労働的には楽になりました。しかし、これでは先ほど説明した経営モデルでは成り立たないため、技術提案に至りませんでした。
このように放牧で搾乳ロボットを導入することはできますが、放牧地で牧草を食べさせる放牧ではなく、牛舎内でサイレージを食べさせることを主体とした放牧が現時点で有効な方法であると考えられます。
座長
搾乳ロボット自体で給与する飼料は、エネルギーとタンパク質とではどちらの方が高いのが良いのでしょうか。また、産乳量の向上にはどちらが良いのでしょうか。
堂腰先生
基本的には今回示した数字で、基礎混合飼料28㎏は牧草サイレージベースとなっています。まだ試験はしていませんが、コーンサイレージも含まればもう少し粗飼料割合を高められると思っています。
32㎏ベースでTDNを上げた試験も行いましたが、蹄底潰瘍が増加したのが気になるところです。搾乳ロボットでは牛の自発的な進入が重要なポイントで、蹄病を抑えることが主眼になります。そのため混合飼料を抑えているという実態にあります。今回、濃厚飼料のCPが21%と高めに設定されているのは給与量が限られるからです。具体的には殆ど大豆粕であり、それにコーンを加えて調製しています。
座長
搾乳ロボット1台の、メーカーに支払うメンテナンス費用は一般的にいくら位でしょうか。
堂腰先生
メーカーによって異なりますが、80万円前後と思われます。それもメーカーによって、農家さん主体でメンテナンスするか、メーカーによってフルメンテナンスするかによって料金は変わってきます。
座長
既存の牛舎でロボットを設置する場合、何を優先し、どのようなことを考えて設置すれば良いのでしょうか。例えば横断通路が良いのか、故障した時に人が対応し易いのが良いのか。
堂腰先生
既存の牛舎に設置するケースはオランダで多く見られます。オランダで見た例ではあまり設置には拘っていませんでした。牛主体というよりは人の作業や牛舎のスペースといった要因が大きかったです。ただ、牛が搾乳ロボットの周囲に集まってしまうので、その周囲の空間に余裕を持たせること、つまりそこに集まった牛の社会的序列により、序列の低い牛がロボットに入れないこともあるので、その点を考える必要があると思います。
座長
次は荒井先生に対するゲノミック評価についての質問です。
ゲノミック評価は1頭1万円程度の料金ということですが、コストメリットはあるのでしょうか。飼養している牛のゲノミック評価があれば、もっと良くなるということで提案されているのでしょうか。例えばそういう場合であれば、1軒5頭でもやりませんか、という提案の仕方はどうでしょうか。
もう1つは、精度の面で不安があります。今後の見通しについて教えて下さい。日本でもゲノミック評価が普及し、ヤングサイアーが使われるようになるのでしょうか。
荒井先生
ゲノミック評価の関係につきましては、現在リファレンス集団を広げているという内容になっています。国としても補助事業で対応しながら、色々な形で試験を進めているところです。ALIC事業で北海道において10,500頭実施したと言いましたが、来年以降も継続的な事業とする話も出てきています。今後このようなことをきちんとやっていくと精度も上がっていくと思います。ただ、現在はまだ後代検定のようにきっちり時間をかけたものに比べると精度的には劣る結果になっています。
アメリカではリファレンス集団が非常に大きくて、信頼度も高くなってきています。その中ではゲノミック評価の値を非常に良く使われています。ただ、アメリカにおいても後代検定、娘牛が分娩したものをしっかり使って検定しています。
日本の場合はまだ、リファレンス集団が小さいということもあり、今後これを拡大して少しでも精度を上げて、このような技術を有効に使うという動きになっています。また、来年度も実施されるであろうALIC事業の関係では、本来であれば自分たちの未経産牛全てをきっちりやるということが大事になると思います。ただし、それだけの数をやる余裕が無いということで、やはりSNP検査を受けると11,000円程度の検査料になりなかなか検査が進みません。このためこのような事業でリファレンス集団を広げたり、それと同様の試験をしながら広げていくことにつながっています。未経産牛全てをやっていくのが本来の姿かと思われますが、それにかかる明確な信頼度の問題、コスト的に合うのかどうかといったことを検証しています。スライドにもあったとおり、未経産牛SNP検査については、早い時期に検査を受けて結果が出るわけですから、優秀な雌牛であれば、育種改良の資源と考え、供卵牛、種雄牛作出のための計画交配に利用することで遺伝的改良の促進に繋がりますし、また、通常の雌牛でしたら、後継雌牛を生産するのか、受卵またはF1生産へ仕向けるかの判断材料(選抜淘汰)となるため、生産効率および酪農経営の向上に寄与できると考えています。
ゲノミック評価については2月1日から各地区で行われる勉強会でも、専門家の方から具体的な話がありますので、出席し勉強して頂ければ有難いと思います。
現在、後代検定のシステムの中では遺伝評価値(EBV)が公表されてから種雄牛の選抜がなされていますので、ヤングサイアーについては使用できない状況です。
座長
死産率と除籍産次に負の相関があるのは、周産期病で親牛が除籍され、その子牛も死産となるためではないでしょうか。
荒井先生
周産期疾病で除籍となるのは、子供を産んでから例えば30日、60日で倒れてしまう場合ですから、こちらの関係とは違うと考えているのですが、周産期疾病で倒れることについては総合グラフでも60日以内に死廃ということで割合を出しています。周産期疾病、もしくは牛が倒れる前にはしっかりと子供を産んでいるため、ご指摘の点とは違ってくると思います。
死産率と負の相関はマイナス0.1位あり、有意な相関にあるという分析結果が出ています。当然のことながら死産になり母牛はダメージを受けて回復しない、それで繁殖成績が低下する、そのような悪循環に陥るためだと分析しています。死産が起きれば当然母牛についてもダメージを受けて繁殖関係が悪化し、乳量も落ちる、それから後継牛確保も難しくなるといった負の連鎖が出てくるのではないかと考えています。
座長
次は龍前先生への質問です。
2.8mのアッパーロータリーでは8時間でどの位の面積をこなせるのでしょうか。また、その場合の速度、回転数はどれ位でしょうか。また、アッパーロータリーはどの位の価格でしょうか。
龍前先生
一口にアッパーロータリーといっても色々なタイプがあります。TACSで導入したものは深耕タイプですが、非常に懐が深くなっているので作業スピードを上げられるということで、実質4~5km/hで走っています。幅2.8mで1町歩こなすのに、1時間半から2時間程度で終わります。8時間でやるのであれば、それをかけるとどの位になるか答えが出ると思います。
価格についてはメーカーではないので具体的には分かりません。ただ、3m以上になると規格が変わり、100万円単位で一気に高くなると聞いています。TACSに導入しているのは3m未満で規格を一つ下げているようなものです。
アッパーロータリーも良いですが、コンパクトシーダーをお勧めしたいと思います。コンパクトシーダーは精度が高い播種機で、70~90万円位で手に入ります。これはロータリーだけではなく、ディスク、ツースハロー、ローラー等色々な機械に載せられますし、種も選ばないということで非常に使い勝手の良い機械だと思います。
アッパーロータリーも深耕タイプであれば作業能率を上げられるということで、タイプも色々あります。後ろに黒いタイヤを着けたものを使っていますが、それによって軽い鎮圧もしてくれて能率が上がっていると言えます。オプション、規格、幅等を考慮しながら選択すると良いと思います。
座長
オーチャードグラスとペレニアルライグラスを追播した圃場の前植生はどのようなものでしょうか。その圃場を追播する際の基準はありますか。
龍前先生
前植生として選んでいるのはリードカナリーグラス草地以外です。基本的には地下茎イネ科草種を優先していますが、ケンタッキー、シバムギであれば時期的に生育が止まるような地下茎イネ科雑草のところを主体的に実施しています。特にリードは再生スピードが早く、日陰にしてしまうことがありますので、定着しても翌年の1番草後だと発芽しても再生が確認できない等の問題が出てきます。このようにリード主体であれば別の要因で難しくなってきますので、それ以外の前植生に追播しています。
座長
繁殖の目視による確認は、どのようなタイミングでどの位時間を掛けていますか。
また、従業員への教育をどのように徹底されていますか。ミーティングや「報・連・相」のやり方等、従業員に対してどのようなことをやっていますか。
龍前先生
当牧場はフリーストールでメニューは一群管理です。一群管理の中で一番ポイントとなるのが繁殖管理ということで、搾乳中に除糞作業や牛の移動がある時は目視しやすいと思いますが、除糞担当者や搾乳担当者からの情報を共有するため、搾乳後にミーティングルームに集まって朝の状態を確認する時間を作っています。その後に今日の作業の確認等の情報共有化を実施しています。実際そこで発情を思わせる行動をした牛の番号を確認して、ミーティングルームのコンピューターで行動量や発情のサイクル等を確認し合っています。
座長
以上で質問票でのご質問は終了し、ここからは会場の皆様方からの質問をお受けします。
まず、今回は搾乳ロボット関連の話題提供がありましたが、メーカーの方で日頃現地で気付いたこと等があればお聞かせ願えますでしょうか。
水田氏(デラバル株式会社)
搾乳ロボットに関しましては、ご講演にもありましたように実際に導入するに当たって様々なことを検討して頂くことになりますが、特に牛舎のレイアウト、飼料給与の体系などがその一つになります。今日のお話の内容は搾乳ロボットの一般的なところで、我々のメーカーにも適用されるものであり、非常に参考になる内容であったと思います。
付け加えてお話しをさせて頂くと、今回のお話の中で牛舎のレイアウトとしてフリーと一方通行の対比が紹介されていましたが、弊社では、フリーだけでなくゲートを使い牛の通行を制御するレイアウトをご提案させていただく場合もあります。デラバルでは牛舎のレイアウトとして、「フリー」、「フィードファースト」、「ミルクファースト」の3種類のレイアウトをご用意し、今日お話して頂いたような飼料給与体系、或いは、労働力の軽減など、お客様の優先事項にあわせたレイアウトをご提案しています。ご興味のある方は、我々にコンタクトして頂くとより深いご提案が出来るかと思いますので、よろしくお願いします。
座長
先ほど堂腰先生のお話の中にもありましたが、サツラク農協さんの牧場で搾乳ロボット8台が導入されたということで、ご苦労された点や現状についてお聞かせ頂きたいと思います。
請川氏(サツラク農協)
江別市で法人が立ち上がり、デラバルさんのシステムでロボット8台を入れさせて頂きました。昨年は初産牛を中心に買い集め、現在320頭の搾乳を行なっています。現在の出荷量は1日当り10t前後であり、1頭当り乳量は31.5~32㎏です。
昨日、堂腰先生にも見て頂きましたが、搾乳ロボットシステムとしてはワンウエイでミルクファーストを採用しています。飼料給与はTMRで34㎏程度、ロボットで乳量40㎏当り3㎏の設定を行なっています。アシドーシスの予防を考えて、ロボットでの配合飼料給与量は抑えめに設計しています。
最終的には480頭規模が目標ですが、再来年には全ての牛舎が満床になる予定で進んでいます。
座長
堂腰先生も現地に伺ったとのことですが、補足等がございましたらお願い致します。
堂腰先生
ロボットの導入においてこれまで考えてきたのは、家族経営の中で1台、2台を入れるという形が基本的なスタイルでしたが、今後はこのメガファームさんのような形で一気に8台入れるなど、多様なロボットの使い方も見られると思います。
今回は規模拡大の部分をお話ししましたが、それ以外では、例えば畑酪地帯では酪農を兼業化して畑の方に力を入れる形も見受けられます。これまで酪農というのは専業が当たり前でしたが、ロボットを入れることによって兼業化して所得を確保していく可能性も考えられます。これについては今後このような農家さんの調査をさせて頂きながら、更に検討していきたいと考えています。
座長
次に乳検に関連して、興部町ではオホーツク農業科学研究センターで牛群検定のデータ等が管理、活用されていると思いますが、宿野部係長より何かご意見を頂けないでしょうか。
宿野部氏(オホーツク農業科学研究センター)
当センターでは農協の乳検データを使わせて頂いておりますが、現在のところ乳検加入率が低い状況にあります。今日のお話しの中で、スマートフォン等を活用した新たな取り組みや、ゲノミック等の色々な情報が分かりやすく使えるようになるということですので、農家の方々にも紹介できればと思います。
座長
それでは、TACSしべちゃの代表取締役でもある、JAしべちゃの髙取組合長に、ご意見を頂きたいと思いますが、宜しいでしょうか。
髙取氏(JAしべちゃ組合長 兼 TACSしべちゃ代表取締役)
まず、何故農協と町と雪印種苗かということがあろうかと思いますが、基本的に私の考え方は家族経営が中心でございまして、法人に対してはこれまでなかなか取り組めずにいたところです。ただ、TPPの問題や穀物高騰の問題の中で離農者が増えており、草地酪農地帯の標茶町において、この草地をどう活用していくかという課題の中で法人の立上げを考えたところであります。
そこで何故、雪印種苗かということですが、基本的に北海道酪農というのは雪印に支えて頂いたということもありましたが、特に草地酪農という部分の中では雪印種苗のノウハウというものを我々がしっかりと受け止めながら、組合員にも参考にして頂きたい、要は草地酪農でいかにやれるかという部分を、地元ばかりではなく他の地域にも示していく必要があるということで、雪印種苗さんにお願いした経緯にあります。幸い、現状のような形になっていますので、種苗さんには非常に感謝しているところであります。
平原氏(八雲町・酪農家)
八雲町で酪農家をやってます平原と申します。TACSさんへうかがいたいことがあります。
町、JA、民間企業の三者が共同で法人を興すということで、農業新聞等でも取り上げられ、かなり注目されましたが、まず最初にJA主導で進められたのではと認識しております。
面白いと思ったのは廃校利用の宿泊施設で、小学校などの町営施設も町が一緒にやることでやりやすかったのかなと思っています。北海道の農村エリアでは離農や人口減少が問題になっていますが、私の住む八雲町でも耕作放棄地や廃校などが出ていますし、今後も増えていくと思います。
今回TACSの立ち上げに当たり、いくつかの離農農家の施設や草地の取り纏めがあったと思うのですが、そのあたりの苦労というか、ノウハウがあればお聞かせください。
特に廃校利用は、どのようにしてTACSに取り込むことができたのか、非常に気になる部分であり、お聞かせ願えればと思います。
座長
これは髙取組合長にお願いできますでしょうか。
髙取氏(JAしべちゃ組合長 兼 TACSしべちゃ代表取締役)
当初この法人を考えた時は研修牧場という意味合いも含めて検討した経緯がございます。ただ、研修牧場という位置づけにしますと指定団体に牛乳を出せないことから、農業生産法人の形としました。そして研修の部分は、幸い町も出資して頂いている中で、たまたま近くに廃校になった学校があったのを上手く活用しようという話の中での取組みで「しべちゃ農楽校」が生まれました。正直、運が良かったという表現が当たっているのかなと思っています。
座長
まだ若干時間がございますが、その他のご質問、ご意見はありますでしょうか。
出雲氏(後志農業改良普及センター)
龍前先生にお伺いします。
乳質の関係でありますが、導入後、体細胞数がかなり下がってきているということで、先ほど実習生の方に体細胞8万以下で奨励金を出しているとお聞きしました。私もフリーストールで規模拡大する現場に立ち会ってきました。言葉は悪いですが、家畜市場から導入した寄せ集めの牛群というか、そういうのは暫く乳質が落ち着かないのが現状であったと思います。このように低い値を維持できているのは素晴らしいことだと思います。
具体的にこのような低いレベルにしている要因は何か。淘汰しているのか、搾乳方法なのか、その点を具体的に教えて頂きたいと思います。
龍前先生
先程も少し触れましたが、導入当初は乳量よりも牛のストレスを解消させようということでメニューの濃度も低いレベルで1、2ヶ月調整しました。導入当初については全頭の乳質の情報はよく分からないので、体細胞検査と細菌検査を全頭実施し、高い牛については分房別に全てスクリーニングした経緯にあります。順次、高い牛については治療にかけますし、どうしても体細胞が下がらない牛は別搾りにして、乳質だけは良いものにしていこうということで取り組んでいます。
実際、始めた当初は17~18万個/ml台でしたが、その位の体細胞ですと1万個/ml位上下しても逆に研修生も含めて反応が薄いのですが、これが10万個/ml以下になって一桁になった時に、6万~7万個/mlになっただけで研修生達が騒ぎ出すようになり、このような状況が連鎖してきたというのも要因かなと思っています。
なるべく牛にストレスをかけないということと、早期の治療等の対策を心がけていますが、どうしても治療をかけても良くならない乳房は出てきますので、そのような牛は別搾りで廃棄して、ある意味手間をかけながら出荷しています。
座長
有難うございます。他にご質問がありましたらお願い致します。
米村氏(江別市・酪農家)
今日は貴重なお話を有難うございました。江別で酪農をしている米村と申します。
龍前先生への質問ばかりで申し訳ありません。お話の中で牧場が目指すコンセプトは自給飼料率を上げるということですが、普通に考えて6割を自給飼料でやっていくこと自体も、今の酪農の現状の中でかなりハードルが高い気がします。そのなかで今取り組まなくてはならないというのが、粗飼料の質と収量を上げていくことだと思いますが、まずデントコーンが採れないと収量的にも厳しいと思います。更にデントコーンの収量を上げるための肥培管理とか、土壌改良とかも必要だと思います。
もし草地でもっと収量を上げるとすれば、どこでやっても更新後2年や3年は収量が上がると思いますが、それを維持することが出来ずにどんどん収量を落としていく、そしてまた更新しなくてはならないというサイクルが早くなって、結果的に費用がかかるというのが現状だと思います。
このことについて、TACSでは今後草地を維持するための技術や取り組み方法について考えていますか。
龍前先生
メニューの中での粗飼料比率を目標としては6割位までと考えていますが、いかに粗飼料の栄養価を上げられるかというのは挑戦になると思います。使っている牧草のオーチャード、ペレ、アルファルファといった形にしていこうと思っていますし、糖度があって嗜好性が高くて、ミネラルの高い牧草を選んでいますが、それらの草を中心にして、成分の高いものにどこまで持っていけるかについては、ハードルとして6割を目指しています。
あとデントコーンも含めた反収を上げていくためには、土壌改良をしなくてはならないと思います。この標茶町のTACS周辺は火山灰土壌ですが、実際土壌分析した結果ではリン酸が極端に高くて、カルシウムとマグネシウムが低いというのがこの地域における典型的な土壌の状態です。その中で、pHはそんなに低くないとか、カルシウムの絶対量が少ないとか、そういったことが浮き彫りになっています。当然、過剰なものはなるべく削減し、不足しているものをメインに投入していくわけですが、色々なものを長期的な視野で活用しながら反収を上げていければと思います。
少し抽象的な言い方しかできませんが、私自身、3年で結果が出るとは思ってはいません。10年単位くらいで考える必要があると思います。基本的な作業をいかに継続するかが重要だと思っていますので、そのことを念頭に今後取り組んでいきたいと思います。
座長
他にご質問等はございませんでしょうか。
無いようでしたら、時間になりましたので、これで意見交換会を終わりたいと思います。
3名の先生方、大変有難うございました。皆さん、もう一度拍手をお願い致します。