シンポジウム

一覧へ戻る前のページへ戻る

2015年(平成27年)1月28日

乳牛飼養管理技術の向上-日本型飼養管理の方向性-

総合討議

シンポジスト(講演者)

小林 博行 氏農林水産省畜産振興課長

松本 啓一 氏雪印種苗(株)技術推進室長

泉 賢一 氏酪農学園大学循環農学類ルミノロジー研究室准教授

座長

壇辻 雅博雪印メグミルク株式会社 酪農総合研究所 所長

佐々木 理順雪印メグミルク株式会社 酪農総合研究所 課長

座長

酪農総合研究所の壇辻です。同じく、酪農総合研究所の佐々木です。よろしくお願いします。

輸入飼料依存による飼養管理体系の見直しが迫られる中で、当シンポジウムについても一昨年、昨年は飼料自給率向上をテーマに自給飼料の生産を話題に実施しました。今回はその飼養管理の今後の方向性と具体的な方策を模索すべく、乳牛飼養管理技術の向上をテーマとしました。

今回のテーマに対する3題のご講演は、一つは小林先生から乳牛の能力向上とその発揮、国産飼料自給率向上の二つの政策的ベクトルのお話を頂戴しました。松本先生からは乳牛の消化生理を踏まえた飼養管理、泉先生からはフィールドで能力を発揮させるための飼養管理技術のお話を頂戴しました。

これから更にご理解を深めて頂くために、ご参加頂いた皆様との意見交換を進めてまいりたいと思います。限られた時間ではありますが活発なご質疑をよろしくお願い致します。

進め方については、先ずそれぞれのご講演について講師の先生方からアピールポイントを簡単にレビューして頂き、会場からのご意見とご質問を頂く形で順次進めてまいります。

小林先生

後段の方で餌の話をしましたが、これから国産飼料をどんどん作っていく時に行政として二つ新しく踏み出そうとしていることがあります。但しどんな形で仕上げていくか、絵柄がまだはっきりとしていませんがご紹介したいと思います。

一つは国内で作った粗飼料をどんどん作って頂きたいのですが、その時地域間バランスがあります。 一杯作れるところは作る、言ってみればその出来たものを流通するということをしっかりした形で出来るのだろうか、ということを悩んでおります。農水省では粗飼料の流通をしっかり進めて、国全体として自給率を高めていくことを視野に入れています。行政として踏み出していますが、その絵柄が最終的にどうなるかというところを、これからも走りながらではありますが考えたいということです。

もう一つ今日は飼料米の話が出ましたが、それ以外畑も含めてですが新しい穀物の素材が手に入らないかと考えています。北海道では既に着手されていますが、今日もお話に出ていたイアコーンやハイモイスチャーコーンなどは本当に成り立つのか、もし成り立つのであれば他の畜種ではどうなのか、可能性はどんどん広がります。但しその前提には経済メリットが何処に、そして誰に生じるのかということです。今年の施策の中でイアコーン、それからもう一つ米のソフトグレンサイレージを広めるというところをモデルとして、チャレンジを支援する事業を始めました。そこでは経済行為としての存続意義というところも確かめながらやりたいと思っています。

粗飼料の流通、新しい素材としての穀物の国産飼料というもののチャレンジの時代にこれから入るということをご紹介いたしました。

松本先生

我々の活動の中で一番重要視しているのは乳房炎、蹄病、繁殖障害、周産期病という乳牛の4大疾病対策です。今日は蹄病、周産期病の対策ということで一部分説明しましたが、これらの4大疾病を防ぐ意味で、牛のコンディションを良くするということが重要になってくると思います。

泉先生

今私が最も興味を持って力を入れていることが、今日も繰り返しお話し申し上げましたが低デンプン飼料です。輸入穀物を如何に減らして牛を健康に飼うか、それと低タンパク飼料です。タンパク飼料は非常に高価なので、それをどこまで減らして生産性を落とさず牛を飼えるかということを常々意識しております。

そのキーワードはやはり副産物やエコフィード等の非粗飼料の繊維といったものを上手く、出来ればたくさん使って、それでもルーメンの健康を維持してどの様に牛を飼うかといったところを、少しでも今日皆さんに伝わっていれば嬉しく思います。

更に新しい取り組みとしてはあまり多くの情報は持ち合わせておりませんが、国産濃厚飼料という位置付けでイアコーンであったりお米であったり、そういったものの利用も積極的に考えて取組んでいきたいと考えています。

座長

どうも有難うございました。それではこれから会場の皆様から頂きました質問に対して、それぞれ先生からお答えを頂戴したいと思います。先ず小林先生へのご質問です。

酪農をめぐる情勢と課題検討の視点は理解しております。そもそも国として国内酪農の目標値を酪肉近等で早く明確に示すことが先と考えます。その上で経営安定対策等のあり方が議論されるとも考えます。そこで国としての国内酪農の目標値(数値目標)について、酪肉近等での検討状況と改定されるであろう方向性をご説明願います。

小林先生

酪肉近は法律に基づいた方針で、10年先の目標を5年毎に見直しながら制定しますが、只今改定中です。更に国全体の大きな目標としては基本計画というものがあります。話題になる食料自給率などを定める計画ですが、この計画と同時に公表する予定で3月末に公表出来ればと思っております。

明日審議会である畜産部会が開かれ、第1回の骨子の素案が議論されると思いますので、それを待って頂きたいと思います。方向性としては、酪肉近の構成はお分かりの様に酪農と肉用牛の数量目標を出しますが、当然酪農を縮小するような方向性を模索しているわけではございません。牛乳・乳製品、国民の最も身近な物をどう守って行くかという事を前提に議論されております。

それからそれらを支える牛はどの位なのか、牛の能力を上げれば実現出来るのか、それにコスト、具体的に北海道だったらどういう姿が実現可能なモデルとして示せるのか、これは数字を伴います。それを入れながら議論いたします。明日は数値までは出さないと思いますが、その考え方として労働時間をどう設定するか、それから今日も話が出たようにコントラクター等と個々の農家との関係をどう持って行くのかという外部化の話が大きな基軸となって議論が進められると思っております。

質問

水田地帯で酪農を営んでいる者です。

水田地帯の中でも水田ばかりでなく傾斜地とか海岸淵の冷涼な所では家畜の飼養も盛んだったわけです。ところがその地帯の一昔前の一村一品の主力農産物が米ですと、地域の農業団体や行政がそちら側にシフトして、なかなか少数の畜産農家の情報源とか振興策が具体的に出て来ません。今そういう状態が続いてせっかく畜産技術者が育っても畜産農家の規模がどんどん縮小していく、それに伴って大変失礼な言い方ですが行政、農業団体の担当する人の数と質が落ちてくるという現実があります。その中で情報が乏しくなるような酪農家もいるわけです。

それでこれから色々出てくる施策について、例えば農水からALICへ伝わり農協に伝わる伝言ゲームのような伝達方式もありましょうが、ある程度インターネットでダイレクトに酪農過疎地の酪農経営体でも同様の情報が早く伝わるような手段、担当者の能力によって情報が途切れる事もありますので、そういう形の情報の伝え方について工夫して頂きたいという要望もあります。

小林先生

切実なお話です。我々国の職員だけではなく地方公共団体でも畜産に関わってくれた方が減っています。もしかしたらその地域で研究された伝統的な技術が消え去って来ている所もあるのではないかと思います。それではこの時期に何をやらなくてはならないのかと行政の中で議論した結果、クラスターという考え方に辿り着いたわけです。

畜産農家はもう不特定多数の人では無くなり特定の人になっていて、特定な人が関わるのであれば結びつき、畜産はその人ひとりだけで仕事をやっているわけではなくて地域で成り立っているわけですから、お手伝いできる人、取引のある人が結びついてクラスターなのです。だから地域で畜産農家だけではなく層を厚くしてそこで情報を保有する、又は新しい情報を吸収するという体勢に補助金の受け皿になって頂こうというのが今度の新しい事業です。

ご指摘のあった情報のやり取りは、にわかにこれをやれば良いというのがある訳ではではありませんが、クラスターがもし育ったのであれば、情報伝達もうまくいくかもしれません。そういうことでクラスターでの成功事例を我々も取り上げたいですし、そういうのも逆にクラスター作りに発信するような絵が描ければと今お話を聞いて思います。

質問

松本先生に砂の牛床についてのお話を頂きました。牛の安楽性や蹄病、乳房炎の減少などメリットが多様にあるのはよく言われていますが、私自身見たことがなく敷料処理などは紹介された農家さんでもうまく行われているのでしょうか。

富良野では大きな砂洗浄システムを使っていると聞いた事があるのですが、小さな農家でもうまくやれるのでしょうか。

松本先生

まさに砂の牛床のネックは糞尿処理で、どう処理しているかというと大抵はラグーンで、堆肥舎でやっている所では搾乳牛は砂ですから糞はトロトロです。育成牛に麦稈を大量に入れて堆肥舎で水分調整をするか、それでも水分調整できない場合はロールを混ぜて水分調整するというようなやり方をしています。

アメリカでは半分位が砂の牛床と聞いています。牛床を新築するところは8割位砂で検討しているということです。アメリカでは牛にとって良いものはやっていくという感じですが、日本の場合ですとまず糞尿処理ありきで考えてしまうので、なかなか砂の牛床が増えてこないと私も感じているところです。

あと細かい事を言うと砂の牛床もうまく管理しないとだめです。例えば砂の質も粘土質がちょっと多いと固まってたちまちひどい事になります。

牛床のデザインも例えば牛床が長くてブリスケットボードが無いと、牛床の中に糞をしてしまいその糞尿が固まり大変なことになってしまうところを見ているので、砂は良いのは分かるのですが、糞尿処理の問題、ストールのデザインおよび砂の質等を吟味しないと大変なこととなります。

小さな牧場でも砂が可能かということについて、私の知っている牧場では、経産牛30頭で砂を入れているところがあります。あまり牛群の規模には関係ないのかなと個人的には思っています。

座長

泉先生へ、粗飼料の切断長についてどの程度が適切な長さと考えられているかという質問です。

泉先生

適切な長さというのは講演の中でも申し上げましたが、その粗飼料の特質、Ⅰ番草で遅れ気味で少し穂が出てしまった物なのか、逆にⅡ番草でシナシナの状態なのか、また品種によっても違うかと思います。オーチャードが硬くなってしまったとかリードキャナリーが多いなど色々あるかと思います。その粗飼料によって判断すべきだと思います。

私どもの例を紹介いたしますと、酪農学園では圃場の面積がそれ程潤沢にある訳ではございません。量を採りたいこともあって早刈りは出来る状況ではありません。そういった場合はハーベスターを出来るだけ短くして刈るように現場に伝え、切断長を短くしようということでやっています。

やはり長すぎると食べられないことや茎を残してしまうことがあります。どれ位の刈取り時期なのか、粗飼料が豊富に有るのか無いのかといった様な色々な状況で切断長は変わってくると思います。刈り遅れ気味の堅い繊維の場合、最低限の給与量を確保できるのであれば、世間で言われているより短い切断長でも十分堅いマットを作って反芻を刺激することができると考えています。

質問

泉先生のスライドの部分でお聞きしたいことがあります。『乾草の給与割合と給与順序』のスライドについて、ルーメンマットの堅さがこの表では10.9という数値になっていますが、『牧草種とルーメンマットの堅さ』のスライドでは、イネ科牧草のルーメンマットの堅さが20~30という数値が出ているのですが、この数値の違いはどのようなことなのかということと、給与順序のスライドで嵩が仮に20~30の数値であったとすれば違った結果が出ていたのではないかということです。如何でしょうか。

泉先生

これはまず乾乳牛での試験なのか泌乳牛での試験なのかで採食量の水準が異なるので、結果を別の試験同士で比較するのは少し無理があるかと思います。その試験の中で比較するという様にして頂ければと思います。

また、20、30という数値は恐らく厚さの方かと思います。ニュートンという物理的な指標になるのですが、堅さは20、30までいかないと思います。一番堅い物では別の実験で19という数値はあるのですが、それでも摂取量の違いによって変わってきますので、その数字は試験間で単純に比較なさらないで頂ければと思います。

泉先生

先ほどの質問について完全な答えにならなかったようなので、ルーメンマットの穀物の取り込みについて補足させて下さい。

先ほどの質問はもっと堅いマットであれば穀物がマット内に取り込まれていたのではないかということでしたが、先ほど申し上げた通り、食べた餌は“いなり寿司”のような形になってルーメンに入ってきます。実際に採取して形は確認しているのですが、粗飼料も濃厚飼料も同じ形になってスポンと入ってきます。その塊はマットが堅すぎると弾かれてしまいます。特に濃厚飼料は比重が重たいのでそのまま弾かれて沈んでしまうのではないかと考えています。ビートパルプなどの副産物のように繊維質の物ですと弾かれたとしても軽いので浮いてきます。浮いてきた時に内容物の攪拌が動画のように起こっていますので、取り込まれていくのではないかと考えています。その為、マットが堅ければ堅いほど弾かれて下に落ちてしまうのではないかと推測しています。そこのところは科学的に検証できていませんが、そのように考えています。

質問

小林先生にお願いしたいのですが、ヨーロッパ等ではオーガニック製品の農産物が普及し、結構な格差を付けて流通しています。日本の中では乳製品に関しては一部のメーカーがオーガニックミルクの生産を行っていますが、加工業者、流通を含めて、国としてオーガニックの農畜産物を扱う様な施策について、どのようにお考えでしょうか。

小林先生

オーガニックはどちらかと言うと世界標準がしっかりあり、中身は正直に言えばヨーロッパ型に引っ張られています。それに合わせる様に日本の基準は大体出来ているということです。ご存知の通り畜産の場合は餌作りから始まる。それから動物が生まれるところから、肥育するところからと1から10まで全部やらなければならない。これは実態から見るとかなり厳しい基準になっています。日本は外から餌を入れている、そういう意味では中々やりづらいところです。

施策としてどのように進めるかということを申し上げると、オーガニックは世界標準があると先ほど申し上げましたが、それと同じような基準になるように常にハーモナイズしながら、日本のルールをしっかりと作っていくということを前提にして進めていきたいということです。

そういう意味では常々見直しを迫っていますが、それを積極的に増やしていくかというとこれは難しい問題がございます。私どもの畜産施策で普通の畜産と別枠でオーガニックをストレートに支援するということはございません。そういう意味では基本的に今の畜産物の施策をしっかりと進めながら、選択性として道をしっかりルールをしっかり守っていくというのが農水省のやり方でございます。

座長

泉先生のお話の中でDMI(乾物摂取量)が低くても乳量が出るというようなご説明がありました。これは遺伝的なものなのか、或いはご説明頂いたなかでのルーメンマットの出来具合といったところが左右しているのか、そのあたりは如何なものでしょうか。

泉先生

あれはアメリカの試験研究の結果でした。私も興味深いものでしたので考察部分を良く読み他の文献と付き合わせたところ、DMIが高かった処理区はデンプン含量が非常に高いグループでした。デンプン含量が一番高いもので35%であり、飼料設計をする方でしたらお分かりかと思いますが、これほど高いのは考えられないくらいです。DMIが唯一落ちたのはビートパルプの割合が非常に高くデンプン含量が低下していたグループです。その考察に書かれていたことは高デンプングループで採食量が多くなったのは事実でしたが、ルーメンから通過してしまうデンプンが非常に多く、その通過してしまったデンプンは小腸で吸収され血糖値が上がります。更に血糖値が上がるとインシュリンが出てきますがそれは血糖値を下げる働きをします。血糖値が下がると脂肪を蓄積する方向に働きます。せっかく与えたデンプンが乳生産ではなく脂肪蓄積に回っていたということです。

時間の関係で説明しませんでしたが、ご指摘のあった結果もデンプンの多い区はBCSが高くなっていました。逆にビートパルプが多くなるとデンプンが少なくなって、体脂肪を動員する方向に働いていました。

座長

どうも有難うございます。なぜこのような質問をしたかといいますと、酪総研の経営実証農家で取り組んで頂いている興部町のI牧場さんのところでは飼養管理上、数値的にはDMIがすごく低いのですが産乳性が向上されました。そういった意味ではまさに実例としてあるわけで、よろしければI牧場さんに感覚的なもので結構ですので、今の先生のご説明とリンクするか分かりませんが飼養管理の肝みたいなものがありましたらご披露頂けないでしょうか。

I牧場

先程DMIのお話がありましたが、実は4年ほど前から植生改善をするようになってから乾物摂取量が徐々に落ちてきています。それで現段階では一日あたり18㎏くらいで乳量(乳検)は日平均35㎏位で推移しています。ただ思うのは、設計ではしきれない牧草の栄養分やミネラル分が関係してきているのかなと思います。

もう一つは泉先生のお話にあったMUNについてですが、私のところでは現在平均で10㎎/dlを切っています。それでも産乳量が変わっていないのでそんなにタンパクは上げる必要が無いのではというのが今のところの私の意見です。

泉先生

MUNのところは私も同感でして、このような事例が生産現場であるということで心強いです。ただ、乾物18㎏で35㎏を搾っているということは驚きに値する感じで、飼料からの乳生産効率が非常に高いということなります。先ほどの実験の乳生産効率はだいたい1.5でしたが、I牧場さんのところではおよそ2ですから極めて高い乳生産効率になる素晴らしい飼い方であると思います。時間があったらぜひ見学させて頂きたいと思います。

座長

最後に締めて頂くご質問になりますが、小林先生のご説明の中で和牛の授精率が上がっているというグラフを示して頂きましたが、これだけではないですが、生産者の皆様は現実的には個々の経営ということで、その時その時に儲かるということで取り組んでいらっしゃる。かたや乳牛資源が減少していってこれからどうなるのかという中で、今後の産業構造を考えた上での施策があると思いますが、そのあたり個々の経営と全体の酪農産業の発展を見たところのバランスを行政の方ではどうお考えになって施策を打たれるのかについてお伺いします。

小林先生

おっしゃられるのは一番難しいところです。話の中でもブレーキとアクセルを同時に踏むということは致しませんということですが、性格としては同時に進めようとしているわけです。個々の農家にとって受精卵移植は今の人工授精と比べて遜色ない位の受胎率でやっておられる授精師さんもいます。そういう意味では十分技術的に酪農家のメリットとなる水準にきていると思います。それで和牛を作って頂けると当然F1以上の収益が上がるわけです。そういうことで、酪農家個々の経営にとってはバランスを見ながらやるということはプラスになるということです。

一歩離れて農林水産省の立場から言うと、今和牛の子牛がこれだけ高くなるという異常な状況が続いております。これを何とか冷やさなければいけない、またはそうしないと肥育がつぶれてしまう状況を迎えております。これを併せもって実施したいと思っております。

ただおっしゃるように、国全体で見たらしっかりと次の世代にホルスタインを誰が作るのか、というのが常に付きまといます。私どもにとって酪農を支えるというのは最初に話した黒牛の話ではなくて、今話している後継牛が先だと繰り返し言っておりますけれども、補助金を支出するルールの中にもその思想を描き、かつ要件も受精卵移植をする対象となる雌牛の能力は高いものであってはいけないというようなこと、あと一定割合以下でやって頂きたいということで現実的には運用指針としたいと思っております。

座長

有難うございます。時間も無くなってまいりましたので、質疑はこの辺で打ち切らせて頂きます。

最後にテーマおよび課題について再確認させて頂きたいと思います。小林先生の資料(スライド31)を拝借させて頂きますが、飼料の自給率の数字について現在の基本計画の目標はこうなっておりまして、実際この25年度の26%についてはスタートの22年から全然上がっておらず、この前の基本計画の時も同じように、飼料自給率を上げるという課題の中で現実的には上がってこなかったという事実があると思います。

同じようにスライド35の畜産物の熱供給量のところで畜産物の割合が65%とありますが、純国産原料で生産されているのは16%で、国の食料安全保障上の大きな課題から見れば、ここ何年も国民の期待に応えられなかったということが言えます。そうしたなかで来年度も2,300億円という国の予算をつけて頂き、もう一つは国境措置として関税として輸入されるものに税金を課し(これは国民に負担して頂いている)、こういうものが将来的には我々の子孫に負担となるわけで、そういうことに対して我々畜産に携わる者はそろそろ結果を出すという使命を果たさなくてはならないのではないかと認識をしております。

手段としては、国としての飼料自給率を上げるということは夫々の人が色々なやり方で、例えばコントラクターやTMRセンター、或いは耕畜連携を行うなど個人が与えられたレシピの中で取り組み、国全体として飼料自給率を上げることに繋げていかなければならないと思っています。

酪総研としても微力な組織ではありますが、少しでも貢献できればと思って今後も活動していきたいと考えます。ご意見有難うございました。

一覧へ戻る前のページへ戻る