シンポジウム

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2014年(平成26年)1月31日

国産飼料を最大限に活かした酪農の再構築Ⅱ-地域の取り組み事例と課題-

酪農総合研究所の自給飼料生産拡大の取組みについて

雪印メグミルク(株)酪農総合研究所 田中 二三男 氏

世界各地で頻発している異常気象、為替相場の円安、新興国の経済発展などによる輸入飼料の価格高騰が酪農経営に大きく影響しています。輸入飼料に依存したわが国酪農にとって、生乳生産コストが中長期的に増加していくことが懸念されます。その対策として、国内の飼料生産基盤に立脚し、また、飼料資源を有効活用した持続的酪農経営へ転換することが喫緊の課題となっており、飼料の自給力向上が強く求められ、国政レベルにおいても様々な諸施策が実行されています。

酪農総合研究所は、「酪農生産に関わる幅広い分野の科学的・実践的調査研究とその成果の普及を通して、わが国酪農の発展と食糧の安定的需給に寄与する。」を基本方針としています。そして、公共性・独立性の高い調査研究活動の実施を基本姿勢とし、①調査研究 ②酪農サポート ③広報活動を事業の中核として取組んでいます。

今回、酪農生産者に直接関係する国産飼料の生産強化とその有効利用に関する調査研究の取り組みの一端を紹介します。

1.自給飼料生産拡大・利活用【実証圃場】調査研究

草地の肥培管理や草地更新、最適種の選択による植生の改善、飼料生産および給与原価の低減、適切なサイレージ調製などを目的に雪印メグミルクグループと地域の関連団体で推進体制を構築して、土地資源を有効活用した自給飼料の生産拡大を支援する取り組みです。

具体的には、定期的に現地の巡回調査を行ない、植生調査の結果から草地更新、最適種の選択、雑草抑制、収量調査、飼料分析・設計などを実施します。

現在、北海道や東北、東海の地域特性に応じた以下のような具体的なテーマを設定して取り組んでいます。

  • 作溝型更新機械を活用した草地(簡易)更新
  • イタリアンライグラスを活用した雑草の抑制
  • 冬枯れ抵抗性アルファルファ「ケレス」の普及促進
  • 耐病性F1トウモロコシ「ビビット」などの普及
  • 冬作ライムギの導入による自給飼料作物の生産増強
  • ペレニアルライグラスの導入

2.持続的酪農経営【実証農家】調査研究

草地管理・飼養管理・経営管理の改善で自給飼料の増産とその利活用の優位性を検証して、酪農経営の向上に資することを目的に大学、民間会社、地域の関係団体との推進体制のもとに取り組んでいます。

対象農家を定期的に巡回して、植生やBCS、採食量、飼料分析、飼養環境、牛群検定成績、経営データなど各種調査と経営分析・診断を行ないます。そして、現地検討会と定期検討会を開催して、分析・研究の結果をフィードバックして、課題を抽出し、改善を支援しています。

本調査研究の成果の一部を紹介します。

植生改善で収量が増加し、貯蔵飼料の品質も向上して良質飼料の確保ができました。その結果、乳牛の健康状態が改善、一頭当たり生乳生産量が増加して酪農収益の大幅な向上がみられました。さらに、その成果が地域に波及し、地元農協全体の取り組みとなり、大きな関心が寄せられています。

3.情報提供

これらの調査研究の成果を他の酪農生産現場でも広く、支援し、また、シンポジウムや研修・講習会、研究会、関連誌、HP等で情報提供しています。

限られた土地資源をより効率的に活用するためには、草地管理による地力の維持・向上や適地適作品種の選択、適切な調製をすることで質・量とも最大限に生産することが重要です。また、地域によっては飼料稲・米やエコフィード、未利用資源の有効利用の取り組みも積極的に進められています。

国産飼料の確保はもとより、環境保全などの多面的機能を持つ酪農産業の社会的意義を認識して、国産飼料を最大限に活かした酪農の再構築を実現しましょう。

酪農総合研究所は、酪農生産現場に立脚した事業活動により、「酪農生産への貢献」の実践に努めていきます。さらに全国的に地域の特性に広く対応できるよう、研究所の機能強化とそれに対応した組織体制の構築を図っていきますのでご支援とご指導をよろしくお願いします。

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