シンポジウム

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2011年(平成23年)2月4日

酪農現場におけるバイオセキュリティ-予防とリスク低減のために!-

主催者挨拶

雪印メグミルク株式会社 会長 小原 實

只今ご紹介頂きました雪印ミグミルク株式会社の小原でございます。

日頃は弊社製品に対してご愛顧頂き、この場をお借りしまして厚く御礼を申し上げます。

平成22年度の酪総研シンポジウムのご案内を申し上げましたところ200名の大勢の方々が寒い中、またご多用中のところ、ご参加賜りまして誠にありがたく、厚く御礼申し上げます。

今年の4月1日に持ち株会社の雪印メグミルク株式会社が、資本傘下の100%事業子会社である雪印乳業、そして日本ミルクコミュニティを吸収し、完璧に1つになって合併を果たす事にしております。

非常に変化の激しいこの時代に、この変化に即応するべく体制を整備強化したことであります。

体制を整備強化し、社長をトップとするフラットな意思伝達の早い、スピーディな意思決定の出来る組織に変えるという事でございます。

実は、一昨年の平成21年10月1日に株式移転によりまして共同持ち株会社、雪印メグミルク株式会社を立ち上げております。その際に、3年以内に必ず3社は1つに合併を致しますと公表いたしました。

この度準備が相整い、そして戦略的な事業展開が出来るという判断に立ちまして、本年4月1日に3社は1つに合併をする、従って3年ではなく1年半で前倒しして、総合乳業としての雪印メグミルク株式会社の合併新会社を立ち上げ、新しいスタートを切る事になります。

その事業理念としては、「未来はミルクの中にある」とし、その使命として3つを掲げています。

一つ目は、乳に徹底してこだわる、乳を徹底的に科学的に分析・解明する。

二つ目に、乳を極める事によって新しい商品を消費者に提供し、消費者を重視する経営をする。

三つ目が、酪農生産への貢献を果たす

この3つの使命を持って進もうという事にしております。

ご存知の通り、雪印乳業株式会社は86年の歴史を持っており、北海道で発祥し、長い年月一貫して理念は「健土健民」を掲げております。一方、日本ミルクコミュニティ株式会社は自然の中でミルクコミュニティを育み、社会貢献を果たすという事で、この両社の理念は相通じるものがあります。

国産の牛乳・乳製品の価値を高め、広め、そしてそれを消費者の笑顔の食卓に、健康を届けるという社会貢献を果たしたいと思っております。また、酪農生産の貢献の一環として、昨年4月に立ち上げました酪農諮問委員会の場で酪農生産への貢献を果たすには如何に具体的に進めるべきかというご議論を頂いているところであります。

更にもう1つは、酪農総合研究所に於きまして酪農に関する情報発信を含め、酪農生産への貢献をどの様にして具体的に取り組むかについて盛んに議論を始めているところであります。

牛乳・乳製品は国内外共に、需給は逼迫傾向にあります。新興国の人口が急増し、富裕層が動物性たんぱく質、栄養価の高い食品を求めるため、その需要は急激に伸びてきており、今後益々世界的規模での、牛乳・乳製品の需給は逼迫傾向となり、その傾向は強まる事が予測されます。

乳製品の国際的な貿易量は非常に少なく、生産量の僅か5~6%しか貿易に回る数量はありません。ヨーロッパはEU内で需給の均衡を図っており、米国も自国で生産と消費が均衡しており、僅かにニュージーランドとオーストラリアしか輸出できる国はありません。ニュージーランドはご承知の通り粗放管理で夏場にしか搾らないのでその貿易量は非常に少なく、従って、乳製品は最も国内需給の求められる商品であると言われています。他の品目の貿易では、小麦の貿易量は17~18%であり、トウモロコシ(コーン)は11~13%、砂糖は29~30%、牛肉が10~11%であり、乳製品の5~6%はいかにも低い数量であり、これを輸入に頼るとしてもそう簡単にはいきません。酪農には地域産業の活性化、国土保全の大命題があり、なんとしても国内需給を完璧にしていかなければなりません。生乳は輸入する事が出来ないので、この様な状況になっております。

わが国は、生産も需要も今は落ち気味で縮小傾向にあります。只、2011年度は需要が供給を上回ると予測されており、乳製品の過剰在庫は減少すると見込まれますが、需給変動が厳しく、特にバターが不足するだろうと、またぞろ言われております。

この需給動向を注視しながら、安定供給を果たして行くことが最大の課題であると言えます。また、昨年の猛暑によって生乳生産量に大きな影響を与えたと言われております、これを他の国の例に見ると、例えばイスラエルのキブツ共同体があり、このイスラエルは酪農には不適な地域でありますが、1頭当たりの生乳生産量は世界一を誇っております。是非ともこの国を参考にする必要があります。

これからは、地球温暖化となり、地球規模での大洪水と大干ばつが繰り返し来ると予想され、従って去年の猛暑はまた来ないとは限らないので、暑熱対策は現在大変重要視されています。このイスラエルの人口は720万人であり、その国土は日本の5.5%しかない非常に小さな国であります。しかも、夏は非常に長く、暑い砂漠の上で生活をしています。また、荒地も多く、全く酪農には不適であると言わざるを得ません。

そこでイスラエルの方々は大変に優秀な人々であり、ここでは世界一の1頭当り乳量11,500Kgを誇っています。この国では生産者、乳業メーカー、団体、そして最後に国が総合的に下支えをする事でこの酪農経営をしています。しかも、農畜産物の輸出高は450億ドル、日本円で3兆8000億円($1=85円)であり、日本は輸出を何とか1兆円にと農水省の松岡元農水大臣が方針を出していましたけれど、この小さな国で3兆8000億円の輸出高を誇っています。

この暑熱対策をわが国は早急に紐解いて、このイスラエル酪農を学ぶ必要が急務であると思われます。ご存知の通り、この国は赤土がむき出しであり、水資源が非常に乏しく、わが国のこの緑と水の国土は彼らにとっては羨望の的であります。この国にいる我々が暑熱対策として、イスラエルの酪農を学び、その暑熱対策を講じる事は急務と思っています。イスラエルの方々は枯葉一枚大切に餌に変えているとの事です。

本日の酪農シンポジウムでは疾病防衛対策でありますバイオセキュリティについて話題提供して頂き、ご議論を願いたく存じます。これまでわが国は島国という事で、港と空港だけできちんと水際作戦を徹底すれば、疾病は入ってこないと、清浄国を誇ってきましたが現在は国際化が進み、生産、生活物資の流通、人の往来は激しくなり、また空からは渡り鳥が飛んできますし、中国からは黄砂が飛んでくる事があり、島国としての優位性はありません。口蹄疫の無いアメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアなどの大陸型の防疫体制に変えることが急務であります。先般、日本でも大変な被害を出した口蹄疫や鳥インフルエンザは、更に今も収束はしていません。隣国の東南アジアでは繰り返し発生しており、その感染拡大の猛威に震え上がっています。

本日は、誠に時宜を得たテーマであり、獣医学のオーソリティである3人の先生方から話題提供を頂きまして、バイオセキュリティの認識を高め、生産現場での皆さんの技術力のレベルアップの一助として頂ければと思っております。

今こそ我々は、家畜防疫体制、バイオセキュリティの充実と強化が求められている時ではありませんか。

バイオセキュリティが特別な事ではなく、一人ひとりが極当然の如く、認識を新たにして2度と同じ悲劇を繰り返さない様にこのバイオセキュリティを完璧なものにしていかなければなりません。

本日のシンポジウムでは、是非とも活発なご討議を頂きまして、ご認識と技術のレベルアップを図って頂きたいと思うところであります。

最後になりましたが、本日ご出席の皆様のご健勝と、わが国酪農乳業のご発展を祈念致しまして開会の挨拶に代えさせて頂きます。

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