シンポジウム

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2009年(平成21年)1月30日

自給飼料の最大活用を実現する!!-乳牛改良の方向性と飼料生産の優良事例-

第4講演『牧草・飼料作物の新品種と現場での活用技術』

雪印種苗(株)北海道研究農場場長 高山 光男 氏

「チモシー草地」の中身は?

乳牛の飼養管理において、グラスサイレージに起因する「ケトーシス」や「脂肪肝」の多発が報告され、グラスサイレージがなぜ不良発酵するのか、原料となる採草地の草種構成や栄養分析から調査を開始した。

その結果、「チモシー草地」と思い込んでいた草地が、実は、「シバムギ」、「リードカナリーグラス」(以下「リードカナリー」)に侵食されていることが多く、この実態は、根室・十勝農業改良普及センターによる現地調査結果とも一致していた。また、道北での泥炭草地においても、同様な傾向が見られた。

「シバムギ」「リードカナリー」の問題点は?

農家・草種別の生草成分を分析値で比較したところ、(1)堆厩肥を過剰施用している農家では、カリウム含量・粗蛋白質含量が高く、中でも「シバムギ」「リードカナリー」が顕著であり、乳酸発酵に必要な可溶性炭水化物含量は、いずれの草種も低かった。

「シバムギ」や「リードカナリー」の侵食割合が高く、堆厩肥が過剰施用されている条件では、サイレージ発酵が不良となり、貯蔵性も劣ることがわかった。従って、肥培管理面では、土壌分析・堆肥分析にもとづく、窒素・加里の適正な施用が重要となる。

次に、(2)購入肥料の減肥施用農家では、いずれの草種も可溶性炭水化物が高まり、中でも「チモシー」は高い傾向を示した。このことより、「シバムギ」や「リードカナリー」の侵食割合の高い草地は、「チモシー主体草地」への更新、更には、アルファルファの活用やライグラス類の導入が示唆された。

「完全更新」の留意点

「シバムギ」「リードカナリー」等の地下茎繁殖型の雑草は、完全更新しても、年次を経るに従い、それらの雑草が勢力を増してくる。その対策としては、更新前に、除草剤を散布し、「シバムギ」などを枯殺させておくことが必要となる。

「リードカナリー」主体で、除草剤を使えない条件下では、「イタリアンライグラス」を1~2年栽培利用し、その後「チモシー」を導入することによって、品質の優れた草地を造成することができる。

「簡易更新」の留意点

「シバムギ」や「リードカナリー」に侵食された草地を簡易更新するには、除草剤を利用して、より徹底的に、それらの植生を枯殺し、その後、作溝型播種機を用い、歩く程度のゆっくりした速度で播種作業を行うのがポイントとなる(画像1画像2

「簡易更新」によるアルファルファ「ケレス」の導入

阿寒町において、アルファルファ「ケレス」の導入について、処理区別による植生割合の推移を調査した。

除草剤を利用した簡易更新では、更新4年目で地下茎型イネ科雑草が50%程度と増加したが、3年目まではかなり抑制されていた。

また、除草剤を利用した完全更新区では、更新3年目でも、パーフェクトに抑制が効き、殆ど「アルファルファ」をふくむ牧草で占められていた。このことより、簡易更新、完全更新を問わず、地下茎繁殖型雑草が多い場合は、除草剤で徹底的に叩くことの重要性が確認できた(画像3)。

「完全更新」と「簡易更新」の経費比較

1ヘクタール当りの更新費用を比較すると、「完全更新」が529,200円、「簡易更新」は289,200円、その差額は240,000円と試算された。

完全更新と簡易更新経費比較

簡易更新を成功させるポイント

雪印の牧草品種の紹介

せっかく更新、追播するなら、特性の優れた品種を利用しよう!!

良い牛は良い草より

『良牛は良草より、良草は健土より、健土は家畜より、健民は健土より、健土は愛土より、循環進展無窮也』

雪印グループの創始者である黒沢酉蔵翁の上記言葉(書)には、私たちの生きようを含めその循環系が示されている。ここでは、「牛つくり―草つくり―土つくり」の連関を重視した取組みを強調し、まとめとしたい。

以上

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