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広報「酪総研」

酪農現場の声

No.6 消費者との交流を楽しもう 鹿児島県出水市 鈴木トモ子

  最初に九州の地図を見てください。九州の南部には鹿児島県、熊本県、そして東国原知事で有名な宮崎県があります。次に熊本県と鹿児島県の県境を見ると、熊本県側には水俣(みなまた)市、鹿児島県側には出水(いずみ)市とその隣に大口(おおぐち)市があります。見つかりましたか? その3つの市の境にあるのが私の家なのです。こんな具合に私の家は探せるんです。そして標高が高いところにあるわが家の畑の近くには三角点※1があります。それは私の自慢の1つでもあります。
 山の上にあるわが家は、携帯電話が通じない、インターネットが使えない、そして4〜5年前にやっと上水道になったほどのド田舎。また、わが家は初代で入植したのですが、すべて借金だったので、借金自慢と貧乏生活自慢は誰にも負けないなぁ!!

 酪総研ホームページへの執筆依頼を受けたとき、何を書けばよいのか大変悩みました。私自身の個人的なこと、私の酪農人生、夫婦間のいろんなゴタゴタ劇、子供のこと、酪農経営や後継者の問題、書きたいと思うことはたくさんあります。その中から今回は、同じ仲間の酪農家の皆様や関係団体の方々に、ぜひお知らせしたいと思う「地域交流牧場」についてのことを書くことにします。

 わが家は鹿児島県酪農業協同組合の組合員で、生産した生乳はすべて組合に出荷されます。ですからだまって搾乳だけやっていれば、余さず生乳を出荷できるのです。
 しかし、現在の牛乳消費や餌の問題、農産物自給率の問題、消費者と農家の認識や考え方のズレ、社会情勢の急激な変化、特に子供たちの今後の問題を考えると、このままで良いのかと不安になってきます。

 実は私の子供でさえ、実体験の無さを感じることがあります。
 以前、子供が高校生のとき、わが家でも鶏を飼っていました。その鶏が卵を産み、ひよこが孵り、それが親になって卵を生むというサイクルは、ごく自然で当たり前のように思えます(ちょっと長いサイクルかな?)。
 しかし、実際にそのサイクルを目の前で体験したわが子は「母さん、ひよこって本当に鶏になるんだね!!」と言ったのです。子供としては、教科書で学んだことを自分のものにできた嬉しい言葉だったのでしょうが、私は自分の息子からそんな言葉を聞く"ハメ"になるとは思ってもいませんでした。
 私はこの言葉にびっくりし、酪農家の自分の子供ですら実体験が少なく、今の子供たちにはそんな体験が必要なのだと痛感したのです。

 それまで私は生活することだけにかまけて、子供たちにいろんな経験(あそび)をさせたり、どこかに遊びに連れて行ったり、いろんな行事に参加させたりすることには積極的ではありませんでした。しかし、自分の子供から聞いた言葉をきっかけに、子供が大きくなるまでいろんな経験をさせてこなかったことに大いに反省しました。「かわいい子には旅をさせろ」とはこのことか、と今にして考えます。そのとき、偶然にも地域交流牧場(皆さん、ご存知ですか?)の話を聞き、早速会員として活動することにしたのです。

 地域交流牧場は、自分たちの仕事場である牧場を題材に、子供たち(消費者)に牧場でしかできない体験をしてもらおうと集まった酪農家の組織です。牧場という限られた場所では、ほんの小さな体験しかできないかもしれないけれど、この経験を通じて私たち酪農家の仕事や日本の農業の現実を少しでも理解してもらえるのではないかと思い活動しています。そうやって活動することで、私自身も酪農家として自分の仕事に自信が持て、やる気が出てきます。そして何より体験した方々がとても喜んでくださる姿を見るのがとてもうれしいのです。
 しかし、体験者を受け入れるということは良いことばかりではありません。通常の酪農家としての仕事のほかに、牧場の整備や体験者への対応など、やらなければならないことがいっぱい増えます。また、子供たちのケガや、さらにはO-157などの感染症にも気をつけなければいけませんから、気苦労が絶えません。  でも、良いことと悪いことをプラス・マイナスしたとき、ちょっぴりでもプラスになれば、それでよいではないか。牧場を訪問された方が、その思い出をもとに牛乳をたくさん飲むようになり、結果として少しでも牛乳消費が伸びればそれでよいのではないかと思うのです。大げさかもしれないけれど、日本農業の理解の一端を担っていると自負しながら頑張っています。

 わが家は先にも紹介したようにすごい山の中にあるので、酪農家同士の交流もあまりできませんでした。しかし、この地域交流牧場の会員になったおかげで、遠くは北海道の酪農家とも知り合いになるなど地域間の距離が近くなり、また、視野が広まったように思います。その刺激がとても楽しく、充実しています。
 このホームページをご覧の皆様、ぜひ一度、全国各地にある地域交流牧場の見学に来てみませんか? そして全国の酪農家の皆様、ぜひ地域交流牧場の会員になってみませんか? 会員になると特典もあるョ!!

(地域連絡協議会全国連絡会ホームページ: http://www.dairy.co.jp/df/

 

注1:三角点とは、測量法で定められる測量標の1つで、三角測量に用いる際の基準(経度、緯度、標高)のことをいう。通常は見晴らしの良い高台にあり、柱石が設置される。(本文へ戻る