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酪農現場の声

No.5 飯高ファミリー流こだわり農村共働生活−え!?こ〜(ECOほか)ライフ− 北海道厚岸町  飯高素子


 京都のサラリーマン家庭で育った私が看護婦をしていた頃、北海道道東のある酪農家の人柄と地域の風土が気に入って何度か訪れ、お世話になっているうちに、その地域が医療過疎地であることに気づきました。そして地域医療を志し、一大決心して北海道入りして助産婦と保健婦の資格もとり、その酪農家が住む浜中町の保健婦となったのが15年前。そこで夫(大阪育ちで帯畜大卒後、酪農家をめざして酪農ヘルパーをしていました)と出会い、13年前に結婚して新規就農したのが人生の大誤算のはじまりはじまり〜!?でした。そして結婚と同時に一大決心した志はちょっと横に置いておき、都会育ちだからこそわかる農村の良さを大切にしながら、酪農家としてできる事、やりたい事を楽しむ事に・・・?



風土を生かし共に働き感謝する暮らしを求め
 「道東の風土を生かし放牧主体の酪農を」という漠然とした思いと、夫の酪農ヘルパー等の経験と、酪農実習の経験しかない私と、突然連れてこられた出産間近の牛たち40頭、慣れない者同士が集まって新規就農生活が始まりました。出産ラッシュが一段落する頃には雪どけを迎え、放牧のための牧柵作りに追われ短草放牧適期を逃したりと、最初の5年間は時間に追われたり、試行錯誤の毎日でした。しかし、知識は基礎にしながらも、本当に大切な事は飼っている牛が教えてくれると思い、「わが家の牛を見て考える」事を基本に、今までなんとかやってきました。

 わが家の牧場は50haの草地(放牧地は22ha)で30頭の搾乳牛と10頭前後の育成牛を飼い、5月から11月まで終日放牧しています。春に分娩させ、乳量のピークと牧草の伸びのピークを合わせ、購入飼料をできるだけ減らしつつ、お腹いっぱい牧草を食べさせています。また牧草の収穫は好天を見はからって、できるだけビニールごみが出ず乾物量の多い乾草を収穫するよう心がけています。就農以来共にいる16歳の牛を筆頭に、わが家の牛は平均よりかなり長生きですが、収支バランスが安定するよう経営努力を続け、今では毎年所得率が50%を超えています。土、草、牛をじっくりみながら判断するわが家の経営スタイルは、どちらかというと昔ながらの方法で牛を飼っているのではないかと思います。

 牧場には乳牛のほかに、近隣からもらってきたひつじ、馬、にわとり、ウコッケイ、犬などがいます。また、自家消費用の肉牛もおり、その名前は「びーちゃん」。牧場にいる動物たちは家族であると同時に、時には食糧にもなります。そんな動物たちには、ありがとう、いただきますという感謝の気持ちを込めて、愛称を付けて呼んでいるのです。そうやって食べる「びーちゃん」は、お店で買ってくる単なる肉とは違い、命をいただいているという気持ちから、食糧の尊さを感じるのです。

 そんなわが家の牧場には、農業実習生や友人や子どもたち(校外学習他)を含む地域の人たちがくり返し訪れてくれます。たくさんの人たちの感性を通して、わが家の様子を語りあう毎日はとても刺激的で、酪農の良さを初心にかえって再発見する事も多く、人の輪やつながりにとても感謝しています。そして人の出入りと共に、わが家の産物と物々交換で海のもや山のものが行ったり来たり。わが家の畑は自家製堆肥を使いながら野菜を育てているのですが、その苗やできた野菜、肉、手紡ぎ糸や羊毛フェルト、手作りのおやつやパン、味噌などと交換します。それで買物することもあまりありませんね。

あるもので楽しむものづくり
 放牧によって牛も働き(自分で歩いて草を食べウンコやおしっこをまく等)、そのことによって私たちは「ゆとり」の時間をもらいます。その時間を利用して家庭菜園、食品作り、羊毛加工、大工仕事など生活に役立つ事をするのが趣味になりました。

 自称・飯高公園には子どもたちのための大型遊具がたくさんあります。これは古い農機具や鉄廃材などを利用し、夫が溶接して作ったものなのです。

 たとえば、“ターザンロープ”は、サイロのトップアンローダーをつるしてあったワイヤー、チェーン、電柱、肥料ロープをもとに、滑車(500円)とマメザックル(30円)を買ってきて、計530円で作りました。

  “鉄棒兼3輪車ブランコ”は、基礎の部分をバケットと配合タンクの支柱で、鉄棒部分は水道管にレーキのパイプを2重にして強度を強めて作り、サドルの骨組みは配合タンクの引っ張り棒、3輪車にマメザックルを2つ(100円)買ってきて作りました。3輪車にまたがるようにすわるので、1歳前後の子でもこわがらずに乗れます。 

  “シーソー”は、マニュアスプレッターの鉄骨、バンクリーナーのワイパーのバネ、3輪車の取っ手にステイ部品(200円)だけを買ってきて作りました。

 このほかに“こいのぼり”は漁師さんが要らないという大漁旗をもらってきて縫い合わせて作り、仔牛の哺乳瓶は焼酎ペットボトルの再利用して作りました。

 そして私はといえば、毎年刈る羊の毛もおしりの毛まで全部使いながら、特に暖かくむれない靴下作りに力を入れ、穴があいたら編み直し、プチプチ切れた短い糸も敷物などの織物などに再利用していますし、月経(生理)時に使用する布ナプキンは綿ネル生地で作って10年以上使っています。また、染色材料は草木や菜園の残り物。染色鍋は、昔の「搾乳バケット」、まぜる棒は「流木」、糸を取るカセは「壊れた水道管」で作っています。

 そして藍を育てみては、「こんな寒い所でも育つんだぁ」と感心し、生葉染めで緑の羊毛が空気にふれて空色に変わる瞬間に感動してみたり、チーズ作りでは、仲間たちと情報交換しながらタッパー等で道具を自作し、牛乳にレンネットを入れピーンと固まる様子を見て感動してみたり。

 こんな風に初めて何かに取り組む時のドキドキ感が大好きです。こんなチャレンジを重ねることで、簡単・便利な私流のアレンジも次々ひらめき、台所などはまさに実験室!?簡単・ヘルシー・おいしいがテーマで、私独自の「クッキングブック」も年々増冊。料理は食材の特徴さえ押さえていればあまり失敗しないと思います。

 これらの事はいずれも近所の方からいただくものも含めた廃物を利用している事が多く、費用は数百円から千円ぐらいしかかかりません。使われなくなった物をどんな風に使うかを考えるのも楽しいものです。ポイントは、“お金をかけない事”と“商売にしない事”、そして作りすぎた時はプレゼントや物々交換するのです。そんな具合ですから、生活に使う道具も、ほうき、コーヒーミル、足踏み式紡毛機など、どちらかというと全自動より人力を利用する物のほうが好きです。

農的環境での養育里親とスローライフ!?
 なるべく自然な形の牧場をめざし、動物たちの生死と生活を共にする中で、ふと医療職に勤めていた頃に出会った、虐待・被虐待関係にある親子や家庭で暮らすことができない子どもたちのことを思い出しました。そして、このような子どもたちと、この生活環境の中でいっしょに暮らしたいと思い、養育里親になりました。この10年間、様々な事情で一時的にまたは長期に家庭で暮らせなくなった子どもたち11人と出会い、生活を共にしてきました。

 わが家は牧場という環境のため、生きものが生まれ、成長し、具合が悪く病気になったり、時に死んでしまったりすることがあります。そんな環境で子どもたちも、牛追い、卵拾い、畑仕事、犬の散歩、薪割りなどいろいろな仕事を担当しています。広いところで自由に遊び、いくら騒いでも近所の迷惑にならない暮らしを体験すると、子どもたちは素敵な笑顔を見せてくれます。こういう農的環境こそが、子どもを生き生きのびのびと育ててくれるのではないかと思います。

 昨年春、3歳の子が補助輪なしの自転車に乗れるようになり、母子で自転車通園(保育所まで片道2.5km)をはじめました。自転車に乗ると風が心地よく、車で走っていた時には見えなかったものがたくさんあることに気づきます。子どもといっしょに道端にあるものに関心を寄せて見たりさわったりする道草もしばしば…。北海道に来て以来、車に乗ってばかりでしたが、自分の足をもっと使おうと、今では家族みんなで地域内の用事は自転車で回るようにしています。これってスローライフ!?

 就農以来、これら私達が味わってきた日々の暮らしぶりのおすそ分け(押し付け?)のつもりで、毎年、年末には年賀状代わりのお便り「うししの詩(し)」(B4版 裏表 手書き)を友人たちに送っています。歳とともに出来なくなる事も増えると思いますが、出来ない事を嘆くのではなく、「晴耕雨読話試」(「晴耕雨読」に“人と話すこと”と“いろいろ試してみる”ことを加えたわが家の考え方)をモットーに、この場所で今の自分に出来る事をしながら生きたいと思います。

( 「うししのへや」 HP: http://fosterparent.fc2web.com/index.html