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広報「酪総研」

時の話題

No.22-4 「生乳生産のロス低減=安全でおいしい牛乳・乳製品〜ベストパフォーマンスの発揮を〜」 公益社団法人 北海道酪農検定検査協会 専務理事 熊野 康隆 氏

 


 カウコンフォ−トは、牛の飼養環境の機能である。 飼養環境は、給餌環境を定義する物理的要素と社会的要素の両方で構成されている。 乳牛の飼養環境は、自然な行動の時間配分を実行する能力に影響を及ぼす。最適な環境と栄養とを組み合わせることで、乳牛の時間配分の要求が満たされ、摂食行動や飼料摂取量が最適化され、生産性と健康が向上する。 飼料給与、反芻、および休息の相互作用は、生産性、健康、福祉にとって重要である。 ル−メンの充満と生理学的メカニズムの統合は、飼料摂取量と生産性を制御するが、飼養環境は、乳牛の行動および飼料の産乳反応に対し強力な調節的効果が働く。


  飼養環境の定量的測定で、同じ遺伝能力、同じTMRを給与した牛群の評価をした。これらの酪農場での1日1頭当たりの平均乳量は29.5kgで、範囲は20.4〜33.5kgであった。 この乳量のバラツキの44%が栄養であった。栄養以外の因子(飼養環境)は、乳量バラツキの56%を説明した。 最も重要な飼養環境要因は、残飼量、飼料の掃き寄せ、飼養密度である。


 牛1頭当たりのストール(利用可能なストール1日当たり0.77kg)、残飼量(牛1頭につき1.4〜2.3kg)、飼料の掃き寄せ(牛1頭当たり3.9kg)はすべて牛乳生産と正の関連がある。 飼養環境は栄養と同様に重要である。
  ペン以外の場所に居る時間を最小限に抑えることは、最適な時間配分の鍵である。 休憩のための時間配分の要求を満たすことは、より高い乳量(1日2.3〜3.6kg)をもたらし、跛行の発生率を低下させる可能性がある。
  カウコンフォ−トが改善され、休息時間が1時間増加するごとに乳量が0.9〜1.6kg増加する。また、休息時間が増加すると採食時間、反芻時間が増加し、佇立時間が減少し、蹄の出血と跛行が減少する。
  生理的変化としてコルチゾル応答の減少、成長ホルモンの増加、乳腺と妊娠牛の子宮角の血流量が増加し、結果として廃用率の減少により生産寿命が長くなる。
  慢性的に休息時間が奪われた場合、飼料の採食時間と摂取可能量は3:1の比率で失われる。起立時間が増加すると、採食時間 が2:1の比率で失われる。休息行動が制限されている場合、他の行動より休息が優先される。
  ストールの快適性を改善することは、産乳量を改善し、淘汰率を低下させ、体細胞数を減少させ、牛群の跛行状態を改善する。
  飼養環境の最適化は採食行動を促し、乾物摂取量と産乳量の増加につながる。乾物摂取量1kg は乳量2kgに相当する。
  初産牛と経産牛を一緒に飼養すると、休息活動、反芻行動、産乳量が減少する。産乳量は約10%減少する。飼養密度が増加すると過密レベルが低くても(113%)、悪影響がさらに顕著になる。過密状態の最大の経済的損失は、長期的な健康および繁殖成績の低下であるかもしれないが、ある条件下では、乳量、乳質および乳成分の変化が起こる可能性がある。飼養密度が約120%では休息が減少し、能力の低下が予想される重要なポイントであると考えられる。
  暑熱ストレスの軽減はTHI=68から始まり、乾乳期と泌乳期で重要である。これにより乾物摂取量、産乳量(1日当たり平均3.5kg)、跛行、移行期の改善を図ることができる。牛の快適性は積極的な暑熱ストレスの軽減が必要である。
  跛行は、毎年少なくとも36%の乳量減少、5%の廃用率増加、そして受胎率の低下をもたらす。特にパ−ラ−における穏やかな扱いにより、乳量が3.5〜13%増加し、牛の痛みに対する感情移入が大きくなると、産乳量が約900kg増加する。 穏やかな扱いのアプローチには費用がかからない。


 100頭(搾乳牛・乾乳牛)、 乳価90円/kg、 飼料費50円/kgの条件では乳量減少(暑熱ストレスによる乾物摂取量の低下)で510,000円、乳量減少(遺伝能力の高い牛の淘汰)で904,000円、分娩間隔の長期化で315,541円、淘汰牛増加と販売頭数減少で950,000円、総影響額合計が2,679,541円と試算される。この他に診療費用が加算される。


 乳牛が安定した社会集団に飼われ、最適な環境が自由な活動を提供し、彼らの正常な行動を最もよく支える環境で飼われることが、遠くない将来には一般的になるかもしれない。
 酪農家は牛群の社会的ニ−ズと物理的ニ−ズの両方に適応した牛舎と管理方法を採用している。
 海外では、アニマルウェルフェアの取組みが認証化され、食品の優位性を示す一つの材料となっている。
 EUでは、共通農業政策の一環として、アニマルウェルフェアに配慮した飼養方法に転換する農業者が支援され、畜産物のブランド化が進められている事例がある。
 北米では、アニマルウェルフェアに係る法律を制定する動きや、食品企業の販売戦略の一環として、アニマルウェルフェアを重視する消費者への対応から、農場や生産者団体等が飼養方法を転換する取組もみられる。
 アニマルウェルフェアの国際基準は、OIE(国際獣疫事務局)より順次示されており、日本もその基準に準拠し、公益社団法人畜産技術協会によって、「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」が策定されている。
  北海道酪農・肉用牛生産近代化計画において、供用期間の延長や子牛の死亡率の低下など、家畜のベストパフォーマンスを発揮させる手法の一つとしてこの「飼養管理指針」に配慮した飼養管理を推進している。「安全で高品質な乳製品及び牛肉の安定供給の役割と責任を果たす」ことや、「北海道及び地域の重要な産業として持続的な発展を遂げる」という目的を達成するために、「飼養管理指針」を要件の一つとしている畜産のJGAPの活用なども含め、生産現場で対応し得る飼養管理の推進が図られている。

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