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酪農総合研究所

広報「酪総研」

時の話題

No.20-5 総合討議

【シンポジスト(講演者)】

佐藤 尚親 氏
雪印種苗株式会社 営業本部 トータルサポート室 主事
廣田 和久 氏
北海道農業共済組合連合会 家畜部長
熊野 康隆 氏
公益社団法人 北海道酪農検定検査協会 専務理事

【座長】

松田  徹
雪印メグミルク株式会社 酪農総合研究所 担当部長
柳瀬 兼久
雪印メグミルク株式会社 酪農総合研究所 リーダー

座長 
 最初に事前にいただいた質問票をもとに質問させていただきます。
 まずは佐藤先生への質問です。バンカー、スタックなどサイレージの取り出し方法のポイントを教えて下さい。あわせて簡易更新と完全更新のメリット・デメリット、簡易更新実施におけるポイントを教えて下さい。

佐藤先生
 サイレージ調製後にサイレージの品質が良くなることはないので、品質を劣化させないことがポイントになります。例えばサイレージを取り出すときに取出し面がガタガタだと表面積が増えてしまうので空気に触れる面を減らすような取出しをしたり、取出したあとは毎回ビニールを戻したりします。またサイロ設置のときには、できるだけ間口を北側にすることが好ましいです。スタックは土間が泥濘している場合もあるので、下からではなく上から取出すといった基本を守ることが大切です。
 草地更新については、現場の状況を見る限り簡易更新の方が良いと思えます。完全更新を否定はしませんが、しっかり堆肥を混和している完全更新は少なく、プラウ跡がそっくり切断面に残っているような完全更新が多いので、なるべく簡易更新に移行する方が良いと思います。また“表土を大切にする”という基本的なスタンスが重要です。厚さ数十センチの表土を作るのに何十年もかかります。草地更新の設計は草地造成の設計基準が使われる場合が多いのですが、この設計基準は表土をひっくり返すやり方なので、心土が上になり何十年もかけて作ってきた有機物を含んだ表土を無駄にしてしまいます。ある現場で時系列的に観測したところ、心土が上に出たところは今年の大雨でエロージョンが起きて土が流される反面、表土が残ったところは無事でした。つまり、今後の気象も考えると、心土を表層化したり表土を粗末にしたりするのはナンセンスだと思います。ただ作業機械の重量により圃場に硬盤ができるので、草地造成という考え方から心土破砕と簡易更新で草地改良するという考え方にシフトしていくべきだと思います。

座長 
 佐藤先生への質問です。マメ科比率30%位を維持させるためにはどのような手段があるのでしょうか。常に土壌を団粒化させるにはどうしたらよいでしょうか。団粒化が維持できたらサブソイラの使用は必要ないのではないですか。

佐藤先生 
 マメ科はpHに敏感なので、カルシウム還元、pH調整、マメ科なりの窒素量の投入など、基本的な肥培管理を守ることが大切です。またマメ科のなかでもアカクローバは一番簡単な簡易更新なので、マメ科が少なくなったら追播をお勧めします。追播したアカクローバの直根で土壌の団粒や物理性は改善されますが、時々、土壌硬度計で硬度を測り、硬度次第でサブソイルするなど対応をすればよいでしょう。

座長 
 佐藤先生への質問です。草地更新した圃場が台風や長雨等により冠水や滞水により、翌年春以降に再び播き直しが必要となった場合の土改材も含めた施肥量はどう考えればよいでしょうか。「出芽・生育後に枯死した場合」と「出芽しなかった場合」の2つの事例について教えていただきたい。

佐藤先生
 程度によると思いますが、河川氾濫などにより圃場の土が流されたり、土砂が流れ込んだ場合は土壌分析も含めて最初からやり直しと考え、資材を投入して欲しいと思います。ただし、滞水程度であればリン酸は残るはずなので、リン酸を減肥して施肥すればよいと思います。

座長 
 次に廣田先生への質問です。仮死状態で子牛が生まれてきた場合、子牛を救うために酪農家が出来ること、すべきことをぜひ教えてください。

廣田先生
 それらの対策については現場の先生が一番良く知っていると思いますが、最近導入が進んでいるカーフウォーマーが効果的だと思います。要するに濡れた体を乾燥させることが大切です。更に細かく言えば酸素吸入などいろいろあると思ますが、現場の先生に相談されるのが良いと思います。

座長 
 廣田先生への質問です。X精液を使用していますが、奇形児が生まれる確率が普通精液に比べて少し高い気がします。そのようなデータはあるのでしょうか。
(同様の質問がもう1件あり)

廣田先生 
 子牛の事故で奇形による死亡や廃用はそれほど多くありません。そのような状況からX精液使用による奇形発生のデータは収集していません。今後、そのようなデータを収集する機会があれば公表しますが、現在は回答できるデータはありません。

座長
 廣田先生への質問です。北海道の出生子牛のうち性選別精液で受胎した子牛の割合がわかったら教えて下さい。出生子牛39万頭のうち、ざっくり何割程度かでかまいません。

廣田先生
 データはありますが、今日は持ち合わせていません。よって今は回答できません。
※北海道家畜人工授精師協会の調査によると乳牛への人工授精の約10%を占めておりますので、出生子牛の約4万頭が性選別精液により受胎していると考えられます。(後日、補足回答)

座長
 次も性選別精液についての質問です。性選別精液で生まれた雌牛と通常精液で生まれた雌牛では生存率に差はあるのでしょうか。性選別精液で生まれた牛は弱いということはないでしょうか。受胎率等にも差はないのでしょうか。

廣田先生
 受胎率の差のデータは取っていませんが、性選別精液は使用本数が若干多くなると言われています。講演の中で話した掛り増し経費の2億円がそれと思っていただいて結構です。X精液の子牛が弱いかという分析はしていないので、この場ではお答えできません。我々は個体マスタを持っていますが、マスタ中X精液使用の有無の項目は持っておりませんので、別の手法で実施しなければならないことから、かなり大掛かりになってしまいます。

熊野先生
 以前、同様の質問を受け乳検データをもとに集計したことがあります。そのときはX精液の方が良いとの結果が得られました。今日は(北海道酪農検定検査協会 乳牛検定部の)荒井部長が会場にいるので、少し説明していただきたいと思います。

荒井部長(北海道酪農検定検査協会)
 2012年~2015年における乳検データをもとに、通常精液と性選別精液の生存率(除籍されない割合)について調べました。その結果、生存率は通常精液で73.1%、性選別精液で76.3%と性選別精液の生存率が3.2ポイント高い結果となりました。
 また、2012年~2016年における分娩牛の通常精液と性選別精液の初回授精受胎率については、未経産牛で通常精液59.6%、性選別精液49.2%と通常精液の方が受胎率で10.4ポイント高く、同様に経産牛の受胎率はそれぞれ38.1%、32.6%と通常精液の方が5.5ポイント高い結果でした。

質問者
 私はX精液で生まれた雌牛の受胎率について質問させていただいたのですが、それがわかれば教えていただきたいと思います。

廣田先生
 それは残念ながら追跡調査していません。

座長
 次は乳牛の難産の原因と対策についての質問です。1つ目は、難産を起こしやすい遺伝的特性を有する種雄牛の交配も難産の原因となります。交配する種雄牛の分娩難易度をどの程度考慮されているのでしょうか。2つ目は、分娩予定日を過ぎて分娩する場合も難産が起こりやすい。初産牛の場合は2~3日、経産牛の場合は4~5日分娩予定日を超過した時点でホルモンを使って分娩を誘起することも難産予防になると思いますが、そのような対策は可能でしょうか。

廣田先生
 1つ目の質問は難しいので回答は控えさせていただきます。2つ目の質問について、例えば分娩日を決定するためにホルモン製剤を使用する場合、牛は分娩に対してどのようなホルモンが働いて子宮が収縮し、子宮口が開き、分娩に至るのかを考えると、単体の薬だけを投与すればよいということではないと考えます。子宮を収縮させても子宮口が開かなければ分娩には至らないので、作業効率上、現場ではホルモン製剤の使用を望まれるかもしれませんが危険が伴う感じがします。回答にならないかもしれませんが、以上が私の感想です。


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