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酪農総合研究所

広報「酪総研」

時の話題

No.20-5 総合討議

【シンポジスト(講演者)】

堂腰  顕 氏
地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 根釧農業試験場
 研究部 地域技術グループ 主査
荒井 義久 氏
公益社団法人 北海道酪農検定検査協会 乳牛検定部 部長
龍前 直紀 氏
農業生産法人 株式会社TACSしべちゃ 取締役場長

【座長】

松田  徹
雪印メグミルク株式会社 酪農総合研究所 担当部長
越智 成東
雪印メグミルク株式会社 酪農総合研究所 担当課長

座長 
 只今から意見交換を始めさせて頂きます。
 最初に、皆様方から頂いた質問票に基づいて進めさせて頂きます。
 まず堂腰先生へのご質問ですが、搾乳ロボット導入が乳中体細胞に及ぼす影響について、データや海外でのご報告があれば教えて下さい。

堂腰先生
 搾乳ロボットは搾乳回数が多いので、体細胞数は若干低下するということが言われています。しかし、体細胞数の増減は搾乳ロボットに限らず牛舎環境が大きな要因となっているので、搾乳ロボット自体が体細胞数の上げ下げに特別に関与しているとは思いません。

座長 
 放牧と搾乳ロボットの組み合わせの可能性について、お考えをお聞かせ願います。特に、国内外での事例があれば教えて下さい。

堂腰先生 
 オランダでは牛を放牧させなければならないという決まりがあるので、搾乳ロボットとの組合せでも実施されています。その場合の方法としては2つあります。
 1つは、セレクションゲートという方法です。搾乳ロボットで搾乳した直後の牛がゲートを通ると放牧地側に開き、一方、搾乳間隔が空いていて搾乳する必要がある牛が放牧地へ行こうとしても、放牧地に出さずに牛舎に戻すという方法で制御しています。ただし、放牧と言っても牧草を食べさせて乳を搾るというやり方ではありません。
 これまで根釧農業試験場では牧草を食べさせて乳を搾る放牧の研究を行ってきましたが、その時の方法は資料にあるワンウェイカウトラフィックを採用しています。具体的には採食場所から一方通行で放牧地へ行き、そこから帰ってきた牛は休息場所へ戻り、休息場所にいる牛が放牧地へ出るには、ロボットを通って採食場所に行かなければならないという方法です。それに集約放牧の形態を加えて、給水は放牧地ではなく牛舎内のロボットの近くに給水器を設置します。この場合当然ですが、全頭が放牧地に行き、その全頭がまた戻って来るので、搾乳ロボットが混み合う時間帯が生じます。昼間や夜中は牛が全く帰って来ない時間帯があるため、搾乳ロボットの処理能力は低下してしまいますが、放牧地で牧草を食べるので餌やりの仕事も無く、労働的には楽になりました。しかし、これでは先ほど説明した経営モデルでは成り立たないため、技術提案に至りませんでした。
 このように放牧で搾乳ロボットを導入することはできますが、放牧地で牧草を食べさせる放牧ではなく、牛舎内でサイレージを食べさせることを主体とした放牧が現時点で有効な方法であると考えられます。

座長 
 搾乳ロボット自体で給与する飼料は、エネルギーとタンパク質とではどちらの方が高いのが良いのでしょうか。また、産乳量の向上にはどちらが良いのでしょうか。

堂腰先生
 基本的には今回示した数字で、基礎混合飼料28sは牧草サイレージベースとなっています。まだ試験はしていませんが、コーンサイレージも含まればもう少し粗飼料割合を高められると思っています。
 32sベースでTDNを上げた試験も行いましたが、蹄底潰瘍が増加したのが気になるところです。搾乳ロボットでは牛の自発的な進入が重要なポイントで、蹄病を抑えることが主眼になります。そのため混合飼料を抑えているという実態にあります。今回、濃厚飼料のCPが21%と高めに設定されているのは給与量が限られるからです。具体的には殆ど大豆粕であり、それにコーンを加えて調製しています。

座長 
 搾乳ロボット1台の、メーカーに支払うメンテナンス費用は一般的にいくら位でしょうか。

堂腰先生
 メーカーによって異なりますが、80万円前後と思われます。それもメーカーによって、農家さん主体でメンテナンスするか、メーカーによってフルメンテナンスするかによって料金は変わってきます。

座長 
 既存の牛舎でロボットを設置する場合、何を優先し、どのようなことを考えて設置すれば良いのでしょうか。例えば横断通路が良いのか、故障した時に人が対応し易いのが良いのか。

堂腰先生 
 既存の牛舎に設置するケースはオランダで多く見られます。オランダで見た例ではあまり設置には拘っていませんでした。牛主体というよりは人の作業や牛舎のスペースといった要因が大きかったです。ただ、牛が搾乳ロボットの周囲に集まってしまうので、その周囲の空間に余裕を持たせること、つまりそこに集まった牛の社会的序列により、序列の低い牛がロボットに入れないこともあるので、その点を考える必要があると思います。

座長
 次は荒井先生に対するゲノミック評価についての質問です。
 ゲノミック評価は1頭1万円程度の料金ということですが、コストメリットはあるのでしょうか。飼養している牛のゲノミック評価があれば、もっと良くなるということで提案されているのでしょうか。例えばそういう場合であれば、1軒5頭でもやりませんか、という提案の仕方はどうでしょうか。
 もう1つは、精度の面で不安があります。今後の見通しについて教えて下さい。日本でもゲノミック評価が普及し、ヤングサイアーが使われるようになるのでしょうか。

荒井先生
 ゲノミック評価の関係につきましては、現在リファレンス集団を広げているという内容になっています。国としても補助事業で対応しながら、色々な形で試験を進めているところです。ALIC事業で北海道において10,500頭実施したと言いましたが、来年以降も継続的な事業とする話も出てきています。今後このようなことをきちんとやっていくと精度も上がっていくと思います。ただ、現在はまだ後代検定のようにきっちり時間をかけたものに比べると精度的には劣る結果になっています。
 アメリカではリファレンス集団が非常に大きくて、信頼度も高くなってきています。その中ではゲノミック評価の値を非常に良く使われています。ただ、アメリカにおいても後代検定、娘牛が分娩したものをしっかり使って検定しています。
 日本の場合はまだ、リファレンス集団が小さいということもあり、今後これを拡大して少しでも精度を上げて、このような技術を有効に使うという動きになっています。また、来年度も実施されるであろうALIC事業の関係では、本来であれば自分たちの未経産牛全てをきっちりやるということが大事になると思います。ただし、それだけの数をやる余裕が無いということで、やはりSNP検査を受けると11,000円程度の検査料になりなかなか検査が進みません。このためこのような事業でリファレンス集団を広げたり、それと同様の試験をしながら広げていくことにつながっています。未経産牛全てをやっていくのが本来の姿かと思われますが、それにかかる明確な信頼度の問題、コスト的に合うのかどうかといったことを検証しています。スライドにもあったとおり、未経産牛SNP検査については、早い時期に検査を受けて結果が出るわけですから、優秀な雌牛であれば、育種改良の資源と考え、供卵牛、種雄牛作出のための計画交配に利用することで遺伝的改良の促進に繋がりますし、また、通常の雌牛でしたら、後継雌牛を生産するのか、受卵またはF1生産へ仕向けるかの判断材料(選抜淘汰)となるため、生産効率および酪農経営の向上に寄与できると考えています。
 ゲノミック評価については2月1日から各地区で行われる勉強会でも、専門家の方から具体的な話がありますので、出席し勉強して頂ければ有難いと思います。
 現在、後代検定のシステムの中では遺伝評価値(EBV)が公表されてから種雄牛の選抜がなされていますので、ヤングサイアーについては使用できない状況です。

座長
 死産率と除籍産次に負の相関があるのは、周産期病で親牛が除籍され、その子牛も死産となるためではないでしょうか。

荒井先生
 周産期疾病で除籍となるのは、子供を産んでから例えば30日、60日で倒れてしまう場合ですから、こちらの関係とは違うと考えているのですが、周産期疾病で倒れることについては総合グラフでも60日以内に死廃ということで割合を出しています。周産期疾病、もしくは牛が倒れる前にはしっかりと子供を産んでいるため、ご指摘の点とは違ってくると思います。
 死産率と負の相関はマイナス0.1位あり、有意な相関にあるという分析結果が出ています。当然のことながら死産になり母牛はダメージを受けて回復しない、それで繁殖成績が低下する、そのような悪循環に陥るためだと分析しています。死産が起きれば当然母牛についてもダメージを受けて繁殖関係が悪化し、乳量も落ちる、それから後継牛確保も難しくなるといった負の連鎖が出てくるのではないかと考えています。

座長
 次は龍前先生への質問です。
 2.8mのアッパーロータリーでは8時間でどの位の面積をこなせるのでしょうか。また、その場合の速度、回転数はどれ位でしょうか。また、アッパーロータリーはどの位の価格でしょうか。

龍前先生
 一口にアッパーロータリーといっても色々なタイプがあります。TACSで導入したものは深耕タイプですが、非常に懐が深くなっているので作業スピードを上げられるということで、実質4〜5km/hで走っています。幅2.8mで1町歩こなすのに、1時間半から2時間程度で終わります。8時間でやるのであれば、それをかけるとどの位になるか答えが出ると思います。
 価格についてはメーカーではないので具体的には分かりません。ただ、3m以上になると規格が変わり、100万円単位で一気に高くなると聞いています。TACSに導入しているのは3m未満で規格を一つ下げているようなものです。
 アッパーロータリーも良いですが、コンパクトシーダーをお勧めしたいと思います。コンパクトシーダーは精度が高い播種機で、70〜90万円位で手に入ります。これはロータリーだけではなく、ディスク、ツースハロー、ローラー等色々な機械に載せられますし、種も選ばないということで非常に使い勝手の良い機械だと思います。
 アッパーロータリーも深耕タイプであれば作業能率を上げられるということで、タイプも色々あります。後ろに黒いタイヤを着けたものを使っていますが、それによって軽い鎮圧もしてくれて能率が上がっていると言えます。オプション、規格、幅等を考慮しながら選択すると良いと思います。

座長
 オーチャードグラスとペレニアルライグラスを追播した圃場の前植生はどのようなものでしょうか。その圃場を追播する際の基準はありますか。

龍前先生
 前植生として選んでいるのはリードカナリーグラス草地以外です。基本的には地下茎イネ科草種を優先していますが、ケンタッキー、シバムギであれば時期的に生育が止まるような地下茎イネ科雑草のところを主体的に実施しています。特にリードは再生スピードが早く、日陰にしてしまうことがありますので、定着しても翌年の1番草後だと発芽しても再生が確認できない等の問題が出てきます。このようにリード主体であれば別の要因で難しくなってきますので、それ以外の前植生に追播しています。

座長
 繁殖の目視による確認は、どのようなタイミングでどの位時間を掛けていますか。
 また、従業員への教育をどのように徹底されていますか。ミーティングや「報・連・相」のやり方等、従業員に対してどのようなことをやっていますか。

龍前先生
 当牧場はフリーストールでメニューは一群管理です。一群管理の中で一番ポイントとなるのが繁殖管理ということで、搾乳中に除糞作業や牛の移動がある時は目視しやすいと思いますが、除糞担当者や搾乳担当者からの情報を共有するため、搾乳後にミーティングルームに集まって朝の状態を確認する時間を作っています。その後に今日の作業の確認等の情報共有化を実施しています。実際そこで発情を思わせる行動をした牛の番号を確認して、ミーティングルームのコンピューターで行動量や発情のサイクル等を確認し合っています。


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