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No.19-5「JAにおける植生改善の取り組みについて」JA道東あさひ 営農センター長 小島 友喜

1.JAにおける取り組み状況について

 平成23年から草地植生改善プロジェクトを立ち上げ、草地植生改善5ヵ年計画を進めて3年目となる。

 当地域の草地整備の多くはプラウによる完全更新であるが、JA事業として進めているのは土壌の表層15pを利用する表層攪拌工法を中心に据えた事業を推進している。

 JAが草地更新に取り組むに当たり、プラウ耕はすでに定着した技術になっていて、余り広まっていなかった表層攪拌更新に着目した。

 表層攪拌工法を選択した理由として

①ロータリー工法により、すでに当地域では難しいとされていたアルファルファを定着させる等、先進的に取組んでいる農家グループの施工方法をモデルに表層攪拌工法を更新の中心にした。

②デントコーンの栽培地域も限られていて、多くの場合、グラスからグラスへの更新。更新サイクルは15〜20年に1回程度。プラウ耕による天地返しでは栄養価の高い土は下に行き、栄養価の低い土が土壌表面に上がってくることから、土壌養分が多く堆積している表層の有効利用を目指すこととした。

③表層攪拌工法の欠点として、土壌表面から20pの所に硬盤層ができ、透水性・排水性に対する課題と表層攪拌することで地中に眠っていた雑草の種子が発芽し雑草が増えるという課題があったが、心土破砕(サブソイラー)を行うことと除草を徹底することで課題の改善を図ることとした。

④施工後の土壌流亡が少ないという印象(施工後の圃場を確認していく中で後になってわかったこと)。

⑤表層攪拌工法と事業で更新した草地の土壌分析値を比較した結果、pH値は同等であるがリン酸、カルシウム、マグネシウム等の値は表層攪拌の方が基準値を大きく上回っており、土壌の肥沃度からも表層攪拌法が有効と判断する。


 今年5月〜6月にかけて管内4,000haの植生調査を実施したが草地の半分は雑草という状況であり、平成23年から2年間に亘り草地植生改善事業を進めているものの、植生の悪化が予想以上に進んでいることを実感する結果となった。

 平成21年度からサイレージ品質向上プロジェクトを進めている。コントラ連絡協議会と協力し、コントラ委託農家の1番草収穫作業時に現地に出向き、作業状況や刈り高、水分、運搬間隔、鎮圧時間等を確認し、問題点が見られる場合には改善を求めている。原料草が良くなっても、作業工程に問題があってはいいサイレージはできないとの考えから、地域課題の一つとして進めており、以前からみるとコントラの作業内容は改善されてきている。


〇取り組み体制について

 営農センターは平成21年4月に根室管内4JAの合併と同時に新設された部署で、業務内容としては、地域の課題解決に向け、それを全体に広めて行く役割を担っている。

①草地植生改善プロジェクト(草地植生改善5ヵ年計画)

 地域の課題となっているのは何なのかということで、関係機関や生産者に話を聞いて行くにつれ、草地の植生が悪化してきているということが浮き彫りになってきた。

 植生改善プロジェクト実施までの取り組みとしては、平成21年度はJA所有草地での工法別の播種を行い、その後の出芽状況について経年的に調査を実施。

 平成22年は関係機関と連携し、地域協議会を立ち上げ草地植生改善プロジェクト(GIP)に取り組む。モデル的に2〜3年かけて実施する予定としていたが、その年の生産乳量の低下や飼料費の高騰による農家経営の収支の悪化も重ったため、モデル的取組と並行して全戸対象にして、平成23年度から5ヵ年計画で重点的に取組むことになる。

 究極の目標は植生改善を通じ、自給飼料の栄養価をアップさせ、生乳の増産、農業所得向上につなげることであり、JAの重点取り組み事項にも掲げ取り組みをスタートさせる。

②草地植生改善事業の内容・年間目標

 担当部門・部署毎に5年間、年間、各月というように、夫々のスケジュール・役割・目標を具体的に作成し、プロジェクト全体が円滑に実施できるような内容にした。

 JA草地植生改善事業は、草地更新事業で1,000ha/年、草地の維持・管理を目的とした草地活性化事業で10,000ha/年の2本柱とした。

 目標達成の方策として機械貸出とJAが作業を請け負う受託という方法とした。

 表層攪拌更新をメインに受託作業を行うも、初年度は除草や心土破砕については生産者の意向を尊重した形をとり自由選択としていたが、除草を行わないで耕起を行うと切断されたシバムギの根から再び芽を出してくることから、2年目以降は除草・心土破砕は施工条件に組み入れることに変更。

 自家更新についてもJA植生改善事業に含め、各支所に配置している植生改善担当職員と相談し申し込みした場合には、種子・土改材・肥料等については特別対策を講じた資材提供を受けられることとし、平成24年度では1,080万円の価格折り込み対策を実施。

 更新時の除草作業は、JA委託(3,200L)と機械貸出(1,200L)とし、除草剤をJAが200L単位で購入し除草散布作業の中で負担金として徴収する等、更新費用の3分の2を占める資材代の負担軽減に努めている。

③プロジェクト体制

 植生改善プロジェクトを統括・意思決定する機関として、『植生改善プロジェクト会議』を設立。JA役職員の他に根釧農業試験場、根室農業改良普及センター、ホクレン、雪印種苗(株)、(財)北海道農業公社等の生産者に関わりのある関係機関やメーカーには全員に参加してもらい、専門的な相談に対するアドバイス・情報提供を行ってもらう。又、プロジェクトの事務局は、営農センターが担い、作業についても中心的に関わることとし、生産者からの相談対応は、各支所の資材課や営農担当の職員25名を植生改善担当職員として配置し、植生改善に関しワンストップの相談体制の構築を目指す。そのための対策として、植生改善担当職員は、植生改善に対する最低限の知識は身に着けてもらうための合宿研修やスキルチェック試験(年2回)を実施している。

④相談や作業以外の主な日程

 25年度から、新たにサイレージ検討会を開催。更新した圃場の翌年の植生や管理の状況について確認する圃場検討会は支所毎の開催にし、より多くの人が参加しやすい内容に改めた。

⑤表層攪拌作業工程

 Ⅰ番草収穫後(更新予定地は早めの収穫作業をお願い)、草丈が30p程になったら耕起前除草処理を行い、その後10日〜2週間程期間を空け、除草剤が根まで効いているのを確認し心土破砕・石灰質散布・表層攪拌・鎮圧まで行い、1か月以上期間を置き2回目の除草(播種前除草)。散布後、10日以内に施肥・播種、(ブロキャス)を行い仕上げの鎮圧を行う工程となる(仕上げまで2カ月程度)。

 施工後の圃場は、定期的な現地確認を行い、問題に対し早目の対処ができるよう心掛けている。

 夏播種のメリットとして、Ⅰ番草が確保できることと、8月中旬以降の播種となるため、雑草の成長も緩慢となり掃除刈りを行わなくて済む。

⑥更新面積の推移

 補助事業を加えた、JA全体の更新面積は、平均更新率でみると5%前後で推移しており仮にJA事業がなければ全道平均の3%程度であり2%近くの底上げに寄与していることとなる。

 草地更新面積は目標1,000haに対し85%程度の実績だが、もう一本の柱である草地の維持管理を目的とした草地活性化の方は目標10,000haを大幅に下回っている状態が続いている。

 そのような中、除草作業については初年度、600ha、2年目、約1,200haと面積拡大につながってきており、雑草防除の重要性など植生改善に対する意識の高まりを感じてきている。今年度は、JA独自事業として、植生改善助成事業を実施したこともあり約1,500haの除草面積となった。

⑦草地植生改善助成事業

 今年度、JA事業として、草地の植生改善に対する取組(草地更新は除く)に対し、8,000万円の予算で事業費の3分の2を助成する取組を実施(所有面積に応じha当たり2,000円の助成額)。

 助成事業のメニューは草地の維持・管理に限定した内容で、最も申し込みが多かったのは石灰質資材の散布や既存草地への雑草対策等で全体では生産者の7割を超える申し込みとなった。

 25年度実績では、表層攪拌更新は前年並みの面積となったが天候の影響もあってか自家更新面積は大幅な減少となり目標面積の6割弱の実績。しかし、もう一方の草地活性化事業の方は、助成事業の実施もあり施肥改善(タンカル散布、リン酸資材散布)は大幅に増加したことから全体で10,000haの目標に対し8,500ha程の実績となった。


2.取り組みにおける課題

 近年、地球温暖化の影響なのか降雨量も多く、秋遅くまで気温の高い状況にある等、気候変化に対応した技術面の見直しが必要。


 (技術面)

①播種限界時期の延長

 播種時期の限界が9月上中旬近くまで変化しているように感じるが、指導機関の推奨時期は変わらないため現場でのアドバイスが難しい(アルファルファでは7月末)。

②播種する牧草の種類・播種量の検討

 牧草収穫時期も個人対応の場合、1週間から10日程度を要することから、草種の早晩性、牧草の種類や、同じ1sの種子でも粒の大きさに差があり重量の軽い種子は播種量を減らすことも可能なことから今後検討を要する。また、熟期と再生が早いオーチャードグラスや初期生育と再生の早いペレニアルライグラスの導入による雑草対策等へのチャレンジを提案。

③天候不順下でも作業ができる作業機の装備品の検討

 JAが所有している作業機は、天気のいい日を想定した機械装備であり、多少の土壌水分下であっても作業が可能となるよう鉄製ローラーにゴムをかぶせることを検討。

④草地更新は地下茎イネ科雑草を防除する唯一のチャンスなのに、更新時の雑草対策が徹底されていない。

⑤北海道版雑草防除ガイドは農薬登録改訂に伴う草地版の改訂が畑作に比べ遅い印象。

⑥草地更新及び草地活性化など植生改善実施による経済効果の整理が不十分

 今年から、草地更新・草地活性化(心土破砕等)前後の植生・収量・牧草の栄養価などを調査し、植生改善による経済的効果を把握し、数値化を行い植生改善の普及拡大につなげたいと考えており更新予定や活性化を予定している圃場の中から数カ所を抽出して5年間程度追跡調査を実施。


 (費用面)

①JA全体の更新率は5%前後で推移しているが農家個々に見ていくと、10%以上行 っている人がいる

 一方、一切更新していない人もいる。特に経営状況の厳しい場合、草地更新や草地活性化等は後回しになりがちで、植生の悪化⇒低栄養・低品質サイレージ⇒牛の栄養状態↘⇒乳量・乳質↘⇒経営悪化へと『負のスパイラル』に陥っているケースが多い。

②草地への維持管理は基肥・追肥がほとんどで、リン酸や石灰質資材散布は草地更新時のみで、広葉雑草防除、追播、心土破砕等の実施も少ないというのが実態。

③雑草割合が高いにも関わらず、道営事業等の事業内での除草剤散布が認められていない。


3.今後の植生改善の推進に向けて

(1)生産者への理解促進をどう図るか

① 地区懇談会や営農懇談会、植生改善イベント(植生改善フェスティバル)、各支所でのサイレージ検討会の開催等、いかに多くの人に会場に足を運んで興味を持ってもらうか、毎年少しずつ内容を変えた形での情報提供の実施。

② 植生調査は、生産者と一緒に圃場を見て回り、自らの圃場状態を知ってもらうと共に調査結果をデータ化するなど圃場マップと連動させる。


(2)JA内部での実施体制の整備 (案)

① 現在JA植生改善事業は営農センター、各種基盤整備事業は営農部というように分かれているが将来的には草地整備事業の一本化を図り、その中で、一元的にアドバイスを行って行く。

② 草の力を最大限発揮させ、農場の目標に近づけていくためには個々の農場として必要とする自給飼料の量と栄養価の確保に向け、生産者個々に自給飼料生産計画の作成を行い、圃場管理に対しても強弱(草地更新の方法、草種・早晩性、草地活性化の方法、草地の利用方法等)をつけた圃場管理の提案。

③ 草の栄養価や品質は、その年の天候や刈り取り時期により毎年異なることから、必ず粗飼料分析を行い確認したうえで、牛が必要としている栄養水準にコントロールする。


(3)関係機関との協力・連携 (案)

① 環境に配慮しつつ、効果的な草地更新を実施していくことが大事であり、農家、行政、漁協との協力や連携により相互理解を深めていく必要がある。

② 環境への配慮としては、例えば、河川ぎりぎりの草地を無くし緩衝帯の設置、或いは木を植える。土壌流失防止策として貝殻等の水産資源の活用や河川の水質確認に対する立会等を共同で実施する。

③ 効果的な草地更新の実施にあたっては、雑草防除や排水性改善はポイントとなる。

 地下茎イネ科雑草が多い当地域においては更新時の雑草対策は必須であり、除草剤の安全性のデータをしっかり示すことや、暗渠や明渠設置をスムーズに認めてもらうよう理解醸成を図って行く必要あり。


(4)モデル的な取組を継続

 草地更新技術(表層攪拌・作溝・穿孔)、草地活性化技術(心土破砕・追播・施肥改善等)について、圃場条件に応じた安定的な改善技術の確立を目指す。

①表層攪拌更新(除草+心土破砕)を中心にした受託対応と更新機械の貸出は継続していくが、将来的にはコントラや農家個々或いは農家グループで機械を所有し作業を行ってもらうような仕組みづくりの検討。

②雑草防除の推進(ギシギシなどの広葉対策等)

③更新作業技術、作業機械、部品の改善

④資材や種子の組み合わせや播種量、播種時期の検討

 すでに改善や改良を加えたものとして

スプレイヤー 広幅タイヤに交換(播種前除草時のタイヤ痕の防止)
アッパーローター 転圧輪をプレスアップローラーに変更
(多少土壌水分が高くても土が付着せず作業可能)
耕うん軸を高速回転へ変更(作業速度も早まり1回で仕上がる)
替刃を肉盛溶接したことで刃の減りが減少

      

(5)地域への情報提供

① 地域の植生改善優良事例の情報収集。

② 植生改善担当者を中心に技術情報を農家やコントラクター等に提供。


(6)土・草の改善効果を経営改善に波及させる

① サイレージ調製技術の向上による嗜好性の高い草の効果的活用を図る。

② 牛を見て最低限の飼料設計ができる人材の育成。

③ 植生改善効果を経済効果(費用対効果)として実感できる指標づくり。


 管内の牧草地は約50,000haを有しており、豊富な草資源の中で酪農が営まれているが、草地の半分近くは雑草畑という状況。眠っている資源の有効活用するうえで、「土・草づくり」を見直し、草地型酪農地帯のメリット生かすには『草で搾る』という考えに立ち、今後も続くことが予想される飼料高騰時代を乗り切るための、足腰の強い経営の確立に向けた取り組みにつながるよう普及拡大を進めて行く考えにある。

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