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No.14 自給飼料『実証圃場』調査研究2ヵ年のまとめ 雪印種苗と雪印メグミルクの事業連携報告

 雪印メグミルク(株)と雪印種苗(株)が連携し、酪農生産現場への貢献とその持続的発展へ資する目的で、平成20年春より、道内23カ所にて、自給飼料の生産・利活用に関する需要喚起『実証圃場』調査事業を展開してまいりました。
 第2年度にあたる平成21年は、10課題(11ヶ所)に絞込み、調査研究を展開してまいりました。その概略については、「雪たねニュース」、「酪農」誌、「酪総研」ホームページ、などを通じ、幅広く情報発信を行ってまいりました。

 酪農総合研究所は、本調査事業の推進役を担ってまいりました。関係された多くのグループメンバーを代表し、ここでは、課題別にその総括と今後の展望を要約し、ご報告とさせていただきます。

課題別の総括、並びに今後の展望

【I】「作溝型更新機械」を活用した草地(簡易)更新(3ヵ所)
 No.2【中川町、A牧場】  No.3【八雲町、B牧場】  No.5【美瑛町、X牧場】

【II】イタリアンライグラスを活用した、「草地強害植物」(雑草)の抑制(1ヵ所)
 No.1【幌延町、C牧場】

【III】冬枯れ抵抗性アルファルファ『ケレス』の普及促進(4ヵ所)
 No.4【大樹町、D牧場】  No.6【中標津町、E牧場】  No.7【別海町、F牧場】  No.9【岩見沢市、G牧場】

【IV】耐病性F1トウモロコシ『ビビッド』などの普及促進(1ヵ所)
 No.10【新冠町、(株)にいかっぷAS】

【V】冬作ライムギの導入(栽培)による、自給飼料作物の生産増強(2ヵ所)
 No.8−1【清里町、(農)Y牧場】  No.8−2【清里町、(有)Z牧場】

【I】「作溝型更新機械」を活用した草地(簡易)更新

【技術要素】
 手軽な草地更新で、草地植生を改善することができる
1.【汎用性】
 通常の簡易更新の他に、(1)傾斜地では、(不耕起のため)土壌流亡を抑えることができ、(2)放牧地では、(植生を活用するため)休牧期間を抑えることができ、(3)雪腐れ、冬枯れ草地では、(植生競合が回避され)速やかに草生を回復させることができる。このように固有のメリットを活用する場面が拡がり、汎用性は高い。

 No5.「美瑛町 X牧場」では、(1)+(2)の設定で、作溝型機械更新が行われ、それぞれのプラスメリットも加算され、順調な推移を辿っている。(放牧地は、データの集積が困難であり、当牧場は、21年度をもって完了することとした。)
2.【作溝型更新機械の比較】
 雪印種苗(株)北海道研究農場が所有する「シードマチック」と「ブレド」について、いろいろな場面で、比較検討が行われている。
 実証圃場調査事業でも、中川町でそのトライアルが実施されている。試験場、農改センター、役場などが参画され、詳細なデータとりも行われている。

 No2.「中川町 A牧場」では、(2)放牧地設定の下で、上記両機種の比較と、初期放牧の有無を加味した検討が行われている。
 初年目〜2年目の経過では、「シードマチック区」と「早めの放牧開始区」の組合せが良好と判断されている。
写真-1 手前「ブレド」、奥「シードマチック」 写真-2 「シードマチック」による作溝播種跡
写真-1 手前「ブレド」、奥「シードマチック」 写真-2 「シードマチック」による作溝播種跡

3.【草種の検討】
 放牧地では、ペレニアルライグラス「フレンド」が初期生育に優れ、放牧適性もそなえ、利用性が評価されている。一方、採草地においても、ペレニアルライグラス「フレンド」の活用をチャレンジするケースも増加している。

 No.3「八雲町 B牧場」:では、泥炭土壌における、リードカナリーグラス主体草地の草質改善の目的で、オーチャードグラス「バッカス」の導入がトライアルされている。随伴草種として、イタリアンライグラス「マンモスB」とハイブリッドライグラス「テトリライト II」の比較も同時進行で進められている。

 2年目の段階では、ハイブリッドライグラス「テトリライト II」区がその草生比率、収量性で優る傾向を示している。最終的には、オーチャードグラスの植生定着率が重要となり、その推移を見守りたい。
4.【経済性】
  雪印種苗(株)北海道研究農場による試算では、完全更新と比較し、約55%の費用(289,200円/ヘクタール)で更新でき、経済的な有利性も高い。(酪総研シンポジウムレジメより)
 草種、品種によって、若干の違いが生じるので、詳細は、雪印種苗(株)営業所へご相談ください。
5.【問題点】
(1) 機械の貸しまわしの状況では、播種作業遅れが生じやすく、致命傷となりかねない。
(2) 歩く程度のスピ−ドで、ゆっくりした作業が必要で、スピードをあげると失敗しやすい。
6.【今後の展望】
(1) 「完全更新」は、土壌改良に重点がおかれ、土壌改良資材や堆肥を充分に投入(活用)できるメリットがある。ただし、作業料、資材費ともに割高となり、更に、作業日数もかかる。
(2) この「簡易更新」はまさに、上記の逆となるが、【汎用性】でふれたようなシチュエーションでは、有利性が増してくる。
(3) 単に低コストに惹かれて採用するのではなく、長所と短所を把握して、長所を如何なく発揮できる場面で採用することが、望まれる。
(4) 草地面積が100ヘクタールを越える農家、経営体が増加しており、コントラクターを含め、草地管理機械の一つに「作溝型更新機械」を所有する時代が到来しつつあると思われる。

この場合、適期播種作業が可能となり、本技術要素の最大の問題点をクリアーすることとなり、成功の確率も高まってくる。

【II】イタリアンライグラスを活用した、「草地強害植物」(雑草)の抑制

【技術要素】
 生態学的な雑草の抑制法、環境にやさしい手法ともいえる
1.【導入場面】
 「シバムギ」「リードカナリーグラス」「ギシギシ」等が沢山存在する圃場では、その更新に当たって、事前にそれらの強害雑草を叩いて、清浄な圃場を準備することが必要となる。
 一般的には、除草剤が使用されるが、漁業との関連で、「禁止」または「不使用」とされる地域があり、そのような場面では、この技術要素が力を発揮することになる。
2.【汎用性】
 上記のシチュエーション以外では、(1)もともと除草剤を使いたくないという人、(2)有機牛乳の生産と取り組む経営体(グループ)など、(3)今後は、イタリアンライグラスの魅力をより取り込もうとする人、等へ、時間をかけて拡がりを見せるものと思われる。
3.【抑制メカニズム】
 イタリアンライグラスの優れた初期生育と伸張性を活かし、強害雑草を被圧し、刈り取り後も、イタリアンライグラスの卓越した再生力を活用し、被圧を重ねることで、衰退をはかる。
 この方法を2ヵ年継続することによって、実害が無い程度に、強害雑草の抑制ができる。
写真-1 幌延町におけるイタリアンライグラス(マンモスB)によるリードカナリーグラスの抑制草地
写真-1 幌延町におけるイタリアンライグラス(マンモスB)によるリードカナリーグラスの抑制草地

4.【問題点】
 北海道では、一年〜短年利用のイタリアンライグラスは、通常、利用(栽培)されていない。その草種特性も把握されていない。従って、イタリアンライグラスの特性を把握するところからのスタートとなる。
  II番草での充分な被圧を実現するには、 I番草刈り取り後の、窒素肥料の追肥が必要となり、一昨年実施の、天塩町、幌延町では、この対応が欠けていた。窒素成分で40キログラム/ヘクタールが基準となる。(農家心理として、この段階での追肥は抵抗があるのかも知れないが、ここでケチると、もとのもくあみとなる。)

 No1.「幌延町 C牧場」:2年目の取り組みにおいても、 I番草収穫後の追肥が実行されなかった。従って、リードカナリーグラスの抑制も部分的なバラつきが認められ、今春、チモシー草地へ戻すに際しても、除草剤利用の是非で悩む結果となった。
5.【経済性】
 イタリアンライグラスの種子代は、牧草の中でも安価なほうで、物財費ベースでは、除草剤処理と大差がない。しかし、2ヵ年という期間をどう評価するのか、今後の課題でもある。

 2年間、イタリアンライグラスをしっかり栽培し、その収穫物を上手に調製利用し、飼養効果へつなげてゆくことが、抑制効果と経済性の両面で得策と言える。
6.【今後の展望】
(1)この技術要素本来の定着は、当面、除草剤が使えないエリア・生産手法に限定されてくる。
(2)平場(泥炭地)における、リードカナリーグラスの抑制は、土壌排水の良否にも左右され、全面的な抑制はなかなか難しい。一方、山場(重粘地、など)における、リードカナリーグラスの抑制は、成功の確率が高いものと思われる。
(3)今後は、リードカナリーグラス主体草地の【栄養価、嗜好性改善の技術要素】の一つとして、イタリアンライグラスの追播が採用される可能性もある。

こちらは、リードカナリーグラスを上手に活用するというスタンスであり、これも生態学的な手法と言える。
(4) 反収が上がり、かつ、高栄養というイタリアンライグラスの利点が、今後は、土地条件の制約を受ける畑酪地帯などで活かされる可能性もあり、そのようなニーズがあれば、「実証圃場」としての展開・トライアルを試みたい。
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