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No.4 若年世代の食意識から牛乳・乳製品と食育を考える 酪農学園大学 同短期大学部 助教授 筒井静子

 長期的な牛乳消費量の減退に対処する目的で、ターゲットを中高生に絞り込んで行った『牛乳に相談だ』キャンペーンは、効果を上げていると言える。さらには、ホクレンは牛乳の消費拡大を目指し、かつてのヒットコピーである『MILKLAND HOKKAIDO』を再び採用して大掛りなキャンペーンを実施することを決めている。
 そのような背景をもとに、ここでは、本学学生を対象に行った「食に対する意識調査と食生活の実際」を紹介しながら、牛乳・乳製品と食育について考えてみたい。

若年世代の食意識
 飽食の時代と言われるほど、恵まれた食環境に加え、兄弟も少ないため、食べ物で争った経験の乏しいポスト団魂ジュニアと呼ばれる1975年以降に生まれた世代の食意識はどのようなものだろうか。若年世代の食意識にこれからの食をリードする鍵が潜んでいると考えられることから、本学酪農学科3年生を対象に行った「食に対する意識調査」(2003.11実施)結果を、味の素(株)が行ったオリジナル全国調査と比較しながら紹介したい(図1、図2)。「自分の食生活は乱れていると思うか」の問いに対して、本学学生の約74%が「自分の食は乱れている」と自覚しているばかりか、今の食生活に満足していない者は73%に上った。これは味の素(株)の調査において半数が過去の規範からみて「食生活が乱れている」と自覚しているものの、一方で約7割の者が現状の食生活を「大変満足」と自己肯定した結果と大いに異なった。本学学生は食と農に関して日頃より考える機会が多いことから、一般の若者のような「食への思いの軽さ」は見られなかったものと考えられた。

 しかし、両調査とも約40%の者が「食事は必要な栄養素がとれればそれでよい」、「食べることにお金をかけるなら他のことに使いたい」と回答しており、若年世代の考えには食事を重視する傾向にある他の世代と大きな開きがあった(図3、図4)。
 さらには、自分の食生活は乱れている、お金は他のことに使いたいなど食には無関心のように見えるが、一方では、約6割が「食べることにはこだわるほう」、「味の違いが分かるほうだ」と回答している。食にはこだわるが重視しているわけではなく、また食への思いが軽いが無関心ではないといった考えをもつ若年世代の考えを、私たちは柔軟に受け入れて、これからの食にどのように向き合うかを方向づけることが重要な課題になると思われる。

学生の食生活
 次に、本学農業経済学科3年生を対象に行った「一日の食事の様子」(2006.4実施)を紹介したい。対象者の42%が一日1食以上欠食しており、平成15年国民健康・栄養調査報告の23.6%(20〜29歳)を大きく上回る結果となった。理由として「寝坊したため」、「欠食が習慣となっている」、「食費節約のため」といった、いかにも学生らしい回答をしているのが特徴として見受けられた。
 図5に、その中の二人の学生が書いた代表的な一日の食事の様子を示した。外食においては丼物のような単品が多く、市販のおにぎりやパンで食事を済ませる場合では、一緒に飲み物を購入する割合は非常に少なかった。自炊においては、手間がかからず簡単に用意できるもの、あるいは、カレーやシチューのように多めに作って翌日も食べられるものが多かった。いずれの場合においても野菜類の摂取が非常に少なく気になるところである。このような現状から、一人暮らしの学生が理想的な形で食生活を営むことは難しいと言うことが示されていると考えられた。

もっと牛乳を食べよう
 日本人が唯一栄養所要量を満たしていない栄養素はカルシウムであるが、カルシウムを供給する食品について、それぞれが腸管で吸収される割合を比べると、牛乳・乳製品が約40%と最も高く、次いで大豆・大豆製品と小魚類が約33%、野菜が19%となり、牛乳・乳製品はカルシウム含有量が多いだけでなく吸収率においても他の食品より優れていると言える。これらを考慮するなら、牛乳は飲むだけでなく、例えば和風の調理材料として水やだし汁の代わりに使う(牛乳雑炊、牛乳茶碗蒸し、牛乳うどん、天ぷらの衣、牛乳汁粉、牛乳うの花、牛乳味噌汁)など、飲むから食べるへと発想を換えてみることも必要ではないだろうか。本学の食物栄養学実習(調理を含む、受講生は男女ほぼ同数)でこれらの牛乳料理に取り組んでいるが、実際に作って試食した学生たちは、「思っていたより食べやすくておいしい」、「牛乳を使っているのが分からなかった」といった感想を述べており、牛乳料理は好評で学生たちに受け入れられているように感じられた。
 このように、今後は米を主食とした日本食の様々な効能を考慮しながら加工や調理に工夫を凝らすとともに、牛乳・乳製品を効率的に取り入れた副菜などを上手く組み合わせて牛乳の摂取量を増加させていく必要があると考える。

新しいタイプの乳飲料の可能性
 若年世代の乳類の一人1日当りの摂取量は、7〜14歳では307.8g、15〜19歳では182.1g、20〜29歳では100.2g(平成15年国民健康・栄養調査報告)と学校給食のなくなる年代を境として大幅に減少している。特に、一人暮らしとなる大学生の場合は、食品選択に経済的要因が大きく関与するものの、自由度が増すためイメージや習慣で購入する食品を選ぶ傾向が強くなる。
 では実際におにぎりやパンと組み合わせる飲料はどのようなものか?前述の学生の食生活調査では、節約のため食事の時に何も飲まないケースも見受けられたが、殆どの場合はお茶類(水・ジュース類を含む)を購入していた。パン食では牛乳を摂取する場合があるが、おにぎりの場合では飲み物=ペットボトルのお茶という構図にさえなっている。これは、お茶の味がご飯の味の邪魔をしないこと、ペットボトルの形態が便利であること、食事の時の飲料に甘い味や後味のスッキリしないものは好まれないこと等が考えられる。牛乳の場合はこれらの要因から、また、乳飲料は甘味が強い製品が多いため同様に選択されないのではないかと考える。
 このように食事と一緒に摂取する飲料としては不利な面を持ち合わせている牛乳ではあるが、おにぎりにも合う新しいタイプの乳飲料の開発は難しいのであろうか。例えば、牛乳をベースにほうじ茶やゆずなどの柑橘類を少量添加し、さらに、寒天等で僅かにとろみをつけ、包材をチノパックのような携帯に便利なものに工夫するなど、まだまだ牛乳をベースとしたヘルシーライト感覚の飲料開発の可能性があるのではないかと考える。
 各方面が協力し合い、若い世代に牛乳・乳製品の栄養的価値を正しく伝えていくとともに、若年世代に嗜好的にも受け入れられる乳製品を開発し、利用してもらうことが食育の一端を担うことに繋がるのではないかと考える。