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酪農総合研究所 Research & Development Center For Dairy Farming

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所長就任のご挨拶 酪農総合研究所 所長 土井 時久

写真:酪農総合研究所 所長 土井時久
雪印乳業(株)史料館前にて

株式会社酪農総合研究所は、雪印乳業(株)創業50周年を記念して1976年に創設され、30年間にわたりわが国酪農・乳業の振興を目的に調査研究と普及活動を続けてまいりました。これまでの活動が幅の広い、公平な立場を堅持してきたことは、多くの出版物やシンポジウム、技術普及活動の内容をご覧いただければ容易にご理解いただけるはずです。

今般、当研究所は雪印乳業の機能見直しの一環としてこれを解散し、本社内の研究所として再出発することとなりました。今後も、「酪総研」と愛称されつつ貫いてきた調査研究方針を継承する所存です。研究内容としては牛乳・乳製品を中心とする消費のあり方、「食育」と酪農の関係などの新たな領域にも取り組む所存です。

私がかつて一評議員として酪総研の顧問・評議員会に出席して驚いたのは、酪農各界の錚々たる方々を顧問・評議員にお迎えしていたことです。したがって、年2回開催される顧問・評議員会は、実質的には酪農をめぐる内外の情勢に関する研究会でした。当時の私は、酪農だけを研究課題とするのではなく、農業経済研究の一部として酪農にかかわっていたので酪農事情に疎く、大いに教えられるところがありました。
本年4月に開催された顧問・評議員会でも、学会などでは接し得ない実務に詳しい方々からのご意見をお聞きする機会となりました。意見交換のテーマは「日本酪農の基盤を考える」でした。その中からとりわけ私には重要と考えられる点を挙げてみます。

一点目は、農林水産省関連の「酪肉近」と略称される「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」という政策についてです。わが国の畜産が土地基盤から切り離されて輸入飼料依存型になって久しいのですが、粗飼料自給率を平成27年度までに100%にしようとの方針を含んでいます。希少な土地資源がはたして合理的に利用されているか?となると私の目には疑問百出です。学会の仕事で頻繁に札幌―東京を往復していた頃、羽田を離陸した機上から見えるゴルフ場の夥しい分布に圧倒され、「金持ち日本ではエサを輸入してでもゴルフを優先するのか?」という思いに駆られたものです。

二点目は、食に関することです。近年、若い女性が献血を申し出ても鉄分不足などのため断らざるを得ないことが多いと耳にします。牛乳消費量も少なく、加齢とともに骨粗鬆症が懸念されます。十分なカルシウム摂取のために若年層が牛乳をより多く飲むことが望ましいのですが、なぜそうならないのか? フードシステム学会設立に伴って食をめぐる体系的な研究が進みつつありますが、栄養バランスのよい食のほか、家庭教育をも含む望ましい食生活についてさらに考察する必要があります。

私はこれまで、北海道大学、岩手県立大学などで主に開発経済学、農業経済学、農業政策論を講じてきましたが、今後はその経験を踏まえながら酪総研での調査研究に従事いたします。
農学系以外の学部学生は食料生産事情に疎くなりがちです。食品表示としての「牛乳」と「加工乳」の区別にも無関心です。このことは現在の消費者一般にもいえることで、食の生産から複雑な加工・流通を経て消費者にたどりつくまでに、食関連情報が希薄になったり歪められることがあり、その是正のための一手段としてトレーサビリティの整備が進められつつあります。このような消費にかかわることも今後の当研究所の課題にしていく所存です。

敗戦翌年、奇跡的に、満州から帰国の途についた船で供された麦飯が私の生涯でもっとも美味しい食事でした。生きるための食から潤い、団欒をも重視する食への変化。それは飢餓と飽食の並存する世界では贅沢な課題でもあります。

新生酪総研は、酪農の生産にかかわることを始め、牛乳・乳製品消費にも及ぶ広範な問題の中から重要課題を選んで重点的に究明したいと考えております。皆様からのご助言、ご鞭撻をお願い申し上げます。

2005年6月