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No.3 バンカーサイロから発生する牧草サイレージ排汁の対策  北海道立畜産試験場 技術普及部 次長 山本裕介

はじめに
 北海道内ではコントラクター組織や大規模酪農経営の増加を背景に、牧草サイレージ調製作業は大規模化しバンカーサイロも大型化しています。そのためスピードを優先する大量調製作業体系では、原料草の予乾が不十分で多量の排汁が発生する事例が見受けられるようになりました。排汁は肥料成分を含むので液肥としての利用価値がある反面、pHが低く有機物などの汚濁物質が高濃度に含まれるとされていますが、国内での実規模の試験データがこれまでありませんでした。そこで、今回畜試では排汁に関する実規模での試験を実施し、排汁の発生量や成分、牧草への施用の影響などの基礎的な知見を得ましたので紹介します。

サイレージ排汁の発生量
 チモシー主体草地の1番草を収納した畜試のバンカーサイロでの排汁発生量を表1に示しました。原料草の水分が67%の場合、排汁は発生しませんでしたが83%の場合は収納草量の約16%の62tもの多量の排汁が発生しました。図1のグラフには排汁の発生量と原料草水分の関係を示しました。■印は表1の畜試の数値をプロットしたものですが、海外の報告(曲線)とほぼ一致することがわかりました。そこでこのグラフを利用して水分75%、80%、85%の場合の排汁発生量を計算してみると、原料草1t当たりそれぞれ20L、90L、200Lとなります。このように排汁発生量は原料草水分70%〜85%の間で著しく増加します。また、排汁は牧草収納後の早い時期に多量に発生します。早くて収納1週間後、遅くても4週間後までに全排汁量の50%程度に達します。

表1 原料草収納量、水分および排汁量(畜試サイロ)
サイロ
原料草
収納量(t)
原料草
水分含量(%)
総排汁量(t)
原料草当たりの
排汁量(L/t)
2003
A
181
76
1
7
B
338
79
37
110
2004
A
166
78
11
64
B
333
76
14
42
2005
A
128
67
0
0
B
380
83
62
162
  図1 排汁量と原料草水分の関係および既往の排汁量推定式

サイレージ排汁の成分
 畜試のバンカーサイロで収集した排汁の成分を表2に示しました。同表には平均的なスラリーの成分も載せておいたので比較参考にして下さい。排汁は肥料成分、特にカリウムを多く含みますが、pHが低く、BODおよびTNが高いという特徴が確認されました。従って排汁は河川などへの流出がないよう適正に管理することが必要です。またBODが極めて高いため簡易な浄化施設による処理は困難なので、最終的には圃場に液肥として施用することが現実的な処理法と考えられます。(※BODとは生物化学的酸素要求量で汚濁物質の指標となる。)

表2 牧草サイレージの排汁成分
pH
乾物
N
P2O5
K2O
MgO
CaO
NH4-N
BOD
(現物%)
(mg/L)
畜試
サイレージ
n=15,サイロ数5
平均
4.2
4.6
0.20
0.13
0.58
0.08
0.13
0.03
34079
最小
3.7
3.2
0.12
0.08
0.22
0.06
0.07
0.01
25200
最大
5.0
6.6
0.29
0.20
0.96
0.11
0.28
0.07
40969
スラリー
平均
7.4
7.6
0.36
0.16
0.38
0.07
0.18
0.17
16000
*畜試サイレージについては雨水の混入がない条件で採取した排汁

サイレージ排汁の貯留
 排汁は基本的には既存のスラリーなどの貯留施設に溜めて、ふん尿と混合管理するのが最も手間がかかりません。ただし、排汁とふん尿が混ざるとき有毒ガス(硫加水素)の発生する危険がありますので、作業者の安全のために屋内の施設など密閉度の高い場所では混合しないように十分注意する必要があります。既存の貯留施設が利用できない場合は新たに貯留槽を整備する必要がありますが、比較的安価な貯留施設としてはシートを利用したもの(参照:「シートを利用したふん尿処理施設整備マニュアル」北海道酪農畜産協会・北海道環境整備緊急指導チーム・H16年)があります。貯留槽の容量の考え方としては、発生する排汁を全量貯留できることが原則となります。例えば想定される原料草の水分が80%であれば原料草重量の10%程度の排汁が発生し、1000t規模のバンカーサイロなら、約100m3の貯留槽が必要となります。貯留期間中に排汁を随時くみ出して散布することで貯留槽容量を小さくすることは可能ですが、少なくとも予想される総排汁量の5割程度の容量は確保した方が良いでしょう。 なお、排汁は酸性なので貯留槽は耐酸性の高いものが望まれます。また、排汁散布に使用したスラリースプレッダーなどの散布機は使用後の洗浄が必須となります。

サイレージ排汁の草地への施用
 ここでは1番牧草サイレージ排汁の2番草への施用を想定しています。サイレージ排汁はpHが低く、肥料成分ではカリウム含量が高いという特徴があります。サイレージ排汁を単独で圃場施用する場合には、低pHによる再生草への接触障害と、カリウムの土壌蓄積に注意する必要があります。施肥標準も考慮し暫定ではありますが、牧草サイレージ排汁の2番草への施用指針(表3)を作成しました。また、排汁の肥料成分含量はサイロによるバラツキや雨水の混入、乾燥などにより変化するので、施肥設計においてあらかじめ濃度を測定する必要があります。肥料成分含量はEC(電気伝導度)で簡易的に測定できます。表4はECによる排汁成分推定早見表を示しました。

 平均的な排汁(EC=15 mS/cm 程度)の場合は、チモシー主体草地で1番草刈取り後1週間以内を目途に約1t/10aを施用し、その分カリウム(約6kg/10a)を減肥します。なお、ふん尿と混合貯留し、pHが改善された場合は、通常のふん尿の利用法と同様の考え方で圃場に施用します。

表3 牧草サイレージ排汁の2番草への施用指針(暫定)
指針(暫定)
備考
対象草地
チモシー主体草地 シロクローバは施用により衰退するため、混生率維持のためには施用を避けることが望ましい。
施用時期
1番草刈り取りから1週間以内 接触障害を避けるため牧草の再生前に施用することが望ましい。
肥効率
カリウム 1.0 窒素・リン酸の肥料効果は評価しない。
施用量
2番草へのカリウム施肥標準量を上限とする。 カリウム濃度を実測あるいはECにより推定して施用量を決定する。
カリウム濃度0.6%の場合、1t/10a程度が上限量と計算される。

表4 ECによる推定成分含量早見表
EC
(mS/cm)
TN
P2O5
K2O
(%)
0
0.00
0.00
0.00
5
0.04
0.04
0.07
10
0.12
0.08
0.33
15
0.20
0.12
0.58
20
0.28
0.16
0.84
25
0.36
0.20
1.09
30
0.44
0.24
1.34
*EC(25℃補正値)は排汁原液で測定
*推定値がマイナスの場合は成分含量を0とした

おわりに
 高品質な牧草サイレージを調製するには、原料草の予乾により原料草の水分を60〜70%にすることが推奨されており、この水分では排汁もほとんど発生することなく問題はありません。まず第一に、予乾時間を設ける、あるいはテッダーによる反転作業を組み入れるなどして原料草の水分を下げ、極力排汁を発生させないことが大切です。そうはいっても、作業の都合や天候等により原料草の水分が高くなってしまうことが必ず起きてしまいます。そうなると排汁の発生は避けられません。排汁はふん尿よりもBODが高く厄介物ですが、きちんと管理しなければなりません。環境保全ということからも、予想される排汁の発生量に見合う貯留槽をバンカーサイロに併設し、貯まった排汁は草地に施用するという対応が今後望まれるのではないでしょうか。

【連絡先】
北海道立畜産試験場 技術普及部
北海道上川郡新得町西5線39番地
TEL 0156-64-5321 FAX 0156-64-5348